お酒と人生が醸し出すマリアージュ

はじめに

嬉しい時にも楽しい時にもそこに酒がある。一人で飲んだりみんなでワイワイ騒いだり。お酒と人生が絡まると、そこには深い味わいが生まれてくるのです。そんなお酒と人生が混ざり合う、そしてお酒と料理のマリアージュも楽しい本をご紹介します。お酒が飲めない方にもその雰囲気を味わいを想像することで楽しんでもらえる本たちです。

ワインの味が躍動的な表現で面白い

『東京ワイン会ピープル』  樹林 伸 (著)  ¥759 文春文庫

六本木の不動産会社に勤めるOL、桜木紫野は初めてのワイン会に参加します。二次会に参加せず帰ろうとしたところ、若手ベンチャーの旗手、織田一志と別の店で飲み直すことに。そこで紫野が述べたワインの感想が織田の心を揺さぶり、紫野を別のワイン会へと誘うのですが、ある出来事から彼は参加できなくなってしまい・・・。一人の若い女性がワインと出会い、そこから多彩な人たちと出会っていき、ワインと人との交流を深めていきます。高級ワインとは縁が無いからなあと思っている方でも、彼女が発する、画像が目の前に広がっていくようなワインの味わい表現を読むと「ちょっと飲んでみたいかも」と思ってしまうのでは。ワインが熟成するように人と人との関係も深まっていくものなのかもしれません。

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柚木さんはクズを書くのがうまい

『幹事のアッコちゃん』 柚木 麻子 (著)  ¥638 双葉文庫

久瀬涼平は新人社員。会社の飲み会などは極力参加しないようにしていたのに、忘年会の幹事をすることになってしまったのです。ネットで適当に検索した店を見繕って予約すればいいや、と涼平が考えていたところに謎の女性、アッコちゃんが現れ、彼女が幹事をしているという忘年会に一週間参加させられます。集まるメンバーもお店も多種多様。そこから彼が感じていったこととは。柚木さんはクズ男を書くのがとても上手。歯ぎしりしたくなるくらいのクズ男、涼平がアッコちゃん主催の忘年会に参加することで成長していく様子が共感を呼びます。前半憎らしいくらいのクズぶりだったためにその振り幅はすごいです。お酒は大事な潤滑油になることがよくわかる物語です。

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ここだから味わえる人と酒と料理

『酒の神様 バーリバーサイド』  吉村喜彦 (著)  ¥695 角川春樹事務所

二子玉川にある止まり木のような店、バー・リバーサイド。落ち着いた物腰のマスター、川原と元気な若者のバーテンダー、琉平が美味しい酒と、意外性がありながらもしっくりと馴染むつまみを用意して客を迎えます。春の香りがするミモザ、シチリアのワイン、からすみ。仕事やプライベートで壁に当たったお客たちの心を柔らかく解きほぐしていく、そんなお酒の効用は、実は酒の神様の成せる技なのかも?苦しみがあるから、苦味のある酒の味わいもまた格別に感じられるようになる。そんな人生の深みを味わえるバーなのです。『バー・リバーサイド』の第3弾。1、2巻から読むのはもちろんのこと、それぞれ単独に読んでも充分に楽しめます。

夢を追いかけるのも楽じゃ無い、けど。

『情熱のナポリタン―BAR追分』 伊吹 有喜 (著)  ¥562 ハルキ文庫

昼は魅力的な女性が料理と飲み物を提供する喫茶店、夜は白髪のマスターが酒とつまみを提供するスタイルのお店、バー追分。店の二階に居候させてもらいながら、脚本家を目指す宇藤輝良はコンクールに応募するための作品を書き上げたはいいがある悩みがあって。新宿という大きな街の中で行き交う人たち。その一部がある店の中でお客と店員という形で出会い、その人となりを形作っていきます。夢を追いかけるもの、諦めたもの同士で口にするのは口の中が燃えるような辛さの名付けて「情熱のナポリタン」。やる気を起こさせるガソリンのような、夢を追い続ける者へのエールのような刺激と熱さが口腔内に溢れます。ビールと合わせたらたまらんでしょうね。

そのままでは個性が強すぎる食べ物も酒と組み合わせることでまろやかになったり、互いの旨味がより引き立てられたりする。人と人の交流にも通じるものがあるのかもしれません。

勤明けの酒は深く体に沁み入りそうですね

『ランチ酒』  原田ひ香 (著) ¥1512 祥伝社 

離婚し、娘と離れて暮らす犬森祥子。依頼を受けた相手に対し、夜の間中そばにいるという「見守り屋」の仕事をしています。傷つき孤独だった彼女は、この仕事を通して様々な人の人生を眺め、関わっていきます。ただ一つ自分に許した贅沢はランチ酒。夜勤明けのお腹の具合と相談し、肉か魚か、こってりかさっぱりかを決め、そこに合わせるお酒をチョイス。時にヘビーな仕事内容もある中で、肉体的にも精神的にも疲れた体に暖かな食事と、その口の中を滑らかに駆け抜けていく酒の味は、心にこびりついた汚れも拭い去ってくれるかのようです。昼の酒という少し背徳感のある行為だからこそ美味しさが増す部分もあるのかも。とにかく美味しい描写が上手な作家さんです。お腹が空いている時に読むと、いても立ってもいられなくなりますのでご注意を。

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まとめ

美味しい酒に美味しいつまみはもちろんのこと、人生に起こる様々な出来事が、酒の味わいを深めていくことを描いた物語たち。辛い出来事も、あの一杯を想像すれば少し心が軽くなる。お酒にはそんな作用があるのではないでしょうか。お酒のグラスを手にしながら、ページをめくる夜もまた深い喜びを与えてくれるものです。

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