罪とは何か 罰とは人間がすべき事なのか

『13階段』 高野和明 著 講談社文庫

あらすじ

死刑囚である樹原亮は、犯行時刻の前後数時間の記憶を失っていた。樹原の冤罪を晴らすために、刑務官である南郷は、傷害致死の前科を持つ青年・三上純一と共に調査に臨む。10年前に千葉で起こった老夫婦の強盗殺人事件。証拠も乏しい状況で、二人は真犯人を見つけ、樹原を救うことができるのか。

純一の犯した罪とは

三上純一は二年前に、飲食店で口論となった相手ともみ合いになり、よろけた相手が後頭部を打ち、死亡。懲役二年となり、一年八ヶ月の服役後、仮出所となりました。家に戻った純一を迎えたのは、粗末な家に移り住んだ両親。純一が死なせた同じ歳の青年、佐村恭介の父親に賠償金を払っているためです。それを弟から聞き、衝撃を受け、また両親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになるのでした。

出所後の純一の状況

弟との会話や、近所の人と顔を合わせた時の反応から、自分が犯罪者であることが強烈に自覚される純一。自分の行為が世間からどう見られるのか、そしてこれから自分はどうなっていくのか、厳しい前途に暗い気持ちになります。そんな時に純一の目の前に現れたのは、刑務官の南郷でした。ベテラン刑務官でもある南郷は、純一に、ある死刑囚の冤罪を晴らす仕事に協力してほしい、と言うのです。報奨金も高額であることから、両親の負担の足しになれば、と純一は協力することを決意します。

十年前に起こった強盗殺人事件

十年前に起こった老夫婦の強盗殺人事件。夫婦がナタのようなもので頭を叩き割られた凄惨な現場でした。事件発生後、現場から離れた道路で転倒したバイクのそばに倒れていたのが樹原亮でした。樹原は窃盗の前科があり、保護司である被害者の家に出入りしていたこと、樹原の持ち物の中に、被害者のキャッシュカードが入った財布があった事、そして樹原の衣類から被害者の血液が検出された事が決定的証拠となり、強盗殺人の容疑で逮捕されたのです。

死刑囚が無罪である根拠

一見、犯行は間違い無いのでは、と思われるのですが、現場から持ち出された印鑑と預金通帳、そして凶器が発見されていないことと、樹原本人が犯行時刻の前後数時間の記憶を失くしているということが、犯罪に対する不確定要素でもあります。覚えていないのに罪を認めることはできないと、樹原は主張しているのです。そして彼が思い出した記憶の一部に「階段を昇っていた」というものがありました。その階段がどこなのか、何の目的で昇っていたのかがわかれば、事件の真相にたどり着けるのでは、と二人は考えます。

もう一つのテーマ

隠されていた真実が明らかになって行くミステリー要素と共に、この物語のベースとして描かれているのは「罪」と「裁く」ということです。犯罪を犯せば逮捕され、刑務所に行きます。刑務所での生活は犯罪者の自戒の念を高め、社会復帰させるという前提がありますが、実際は細かな規則に基づき、服役囚たちを監視しているだけ。服役囚の一体何割が罪を本当に反省し、被害者に謝罪し続ける気持ちで生きていくのか。

刑務官の奥深い悩み

死刑という制度自体には賛成派であった南郷も、執行に立ち会ってからは熟睡とは無縁の生活になりました。書類の上では犯罪者が罪を犯したことは理解していますが、会話を交わし、生活を見ていた相手の息の根を止める仕事です。その執行の具体的な様子にも息を呑みます。刑務官にとっては、一生背負っていく出来事であり、罪とは何なのか、罰とは人間が与えるものなのか、神の存在は果たして救いとなるのか。自問を続け、その答えは決して出ることは無いのです。

まとめ

一人の人間の命を奪うことは罪です。一人の人間が世の中からいなくなるだけで、関わる者たちの歯車は大きく狂い始めます。罪を犯した人間はどのように考え、人を殺めたのか。法はどのように裁くのか。その裁きは適切に施行されるのか。その裁きを実行する人間はどのような思いを抱えるのか。人の死を決定する「死刑」について深く考えさせられるミステリーです。

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