データを正しく読み取る力は自分を守る武器になる

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

ハンス・ロスリング (著), オーラ・ロスリング (著), アンナ・ロスリング・ロンランド (著)

日経BP

概要

環境・貧困・人口・エネルギー・医療・教育。世界の状況について、私たちはどれだけ正確に理解しているだろうか。これらについて、3択の問題を出すと、あらゆる人間が間違った答えを選ぶ。

チンパンジーだって、3回に1回は正解を出すと言うのに!私たちがこうした「思い込み」を持ってしまう原因は10の本能にあった。

この本能の仕組みを、正確なデータや著者の実体験を交えて詳しく解説。世界を正しく見るための方法をわかりやすく説明する。

クイズです

15歳未満の子供は、現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子供の数は約何人になるでしょう?

A:40億人 B:30億人 C:20億人

幾らかでも電気が使える人は、世界にどれくらいいるでしょう?

A:20% B:50% C:80%

私たちは間違える

こうした世界の状況にまつわるいくつもの質問が最初に登場するのですが、ほとんどの人が間違えます。経営者、学者、政治家など様々な人物に聞いてもやはり間違えるのです。

なぜ私たちはこうした勘違いをしてしまうのでしょうか。古い情報を教わっているから?しかし、最新の情報を伝えた後でも誤解を解くことができず、説明前と同じ質問を繰り返してしまうことも。

こうした思い込みは本能から来るものなのだと著者は解説します。人間は本能に従って、自分の都合に良い形に、情報をねじ曲げてしまうのです。

間違えるのは本能の仕業

例えば、人は物事のポジティブな面よりもネガティブな面に注目しやすいという特性があります。その特性が、「世界はどんどん悪くなっている」という勘違いを生み出す原因となるのです。

悪いニュースが溢れている

例えば、戦争による死者数はしばらく減少していましたが、シリア内戦やテロなどにより、また増えつつあります。漁業での乱獲や海洋汚染、地球温暖化も極めて深刻な問題ですし、金融危機がまたいつ起こるかもわかりません。確かに不安要素が多くあるのは間違いありませんし、こうしたニュースも良く流れています。

しかし、良いニュースがひんぱんに流れることはありません。良いニュースとは、ここでは「小さな進歩」を指します。具体的な例を挙げると、「世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年で約半分になった」というもの。

良いニュースは確かにある

1800年頃は人類の約85%が極度の貧困にあったのが、その頃から一環して減り続け、直近20年で見ると、人類史上最も速いスピードで、極度の貧困が減ってきているのです。

そして極度の貧困の中で暮らす人は20年前には世界人口の29%だったのですが、現在は9%まで下がっているのです。素晴らしい!他にも、減り続けている「悪いこと」、増え続けている「良いこと」の具体的な数値をいくつも挙げています。

ところがテレビのニュースでスポットライトを当てるのは、極度の貧困での人々の暮らしぶり。大変だ、辛そうだ、気の毒だ、という印象が人々の目に焼き付けられます。その暮らしぶりは事実ですが、その割合が減ってきているという事実にはなかなか目をむけることができません。

私たちが気をつけるべきこと

では私たちはどういったことに気をつければ良いのでしょうか。世界のいまを理解するには「悪い」と「良くなっている」は両立するという認識が必要です。「悪い」は現在の状態であり、「良くなっている」は変化の方向です。目の前のデータはどちらを示しているのかを見極めるのです。

悪いニュースが増えたとしても、悪い出来事が増えたとは限りません。その理由は、世界が悪くなったのではなく、監視、注目することがより多くなったためなのかもしれません。悪いニュースは広まりやすいということを年頭に置いて、情報を得ることが大切なのです。

勘違いを引き起こす様々な本能

このほかにも世界は分断されていると思い込む「分断本能」、世界の人口はひたすら増え続けるという「直線本能」、危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう「恐怖本能」、目の前の数字が1番重要だと思い込む「過大視本能」、ひとつの例が全てに当てはまると思い込む「パターン化本能」、すべてはあらかじめ決まっていると思い込む「宿命本能」、世界はひとつの切り口で理解できると思い込む「単純化本能」などなど、実にさまざまな本能が、世界見る目にフィルターをかけてしまっていることがわかります。

頭に入りやすく、読みやすい構成と文章

著者自身の体験談や世界情勢などを織り交ぜながら、それぞれのフィルターについて詳しく説明していきます。勘違いが起こった具体的エピソードが非常に興味深く、また、環境や人口、エネルギーなどテーマが多岐にわたるにも関わらず、それぞれの項目について、新聞を読み続けたような時系列の流れが理解できるという、読みやすい文体でありながら教養書としての十分な役割を果たしているのです。

まとめ

世界は不安なニュースに満ちています。そのまま受け入れて不安な日々を送るのではなく、この数字によってどんな本能が刺激されているのか、このニュースに関連してどこに目を向けるべきなのかを考えることができれば、この世界は恐怖でいっぱいなのではなく、悪いところが減っていき、多くの人が快適に生きる環境に向かっているのだと思うことができます。

知識と教養は、心穏やかに、すこやかに過ごすためにも必要なツールなのです。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
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