何者でもない私は、かけがえのない私

『田舎の紳士服店のモデルの妻』 宮下 奈都 (著) 文春文庫

あらすじ

東京から夫の田舎に移り住むことになった梨々子。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、恋に胸を騒がせ、子どもたちの成長に驚く。三十歳から四十歳の女性の十年間を、二年刻みの定点観測のように描き出す。

夫への気持ち、子どもの成長への思い。家族や暮らしの中でのみ揺れ動く心。自分はどうなのだ?家族のために、と思っていても家族から私にくれるものはない…。

まとめ

状況や、年代によって変化していく、ちょっと美人で夫がうつ病、息子を二人持つ一人の女性の十年間をていねいに描きます。何かしてもらいたい、自分が主役で痛い、と心の底で思っていた梨々子。

そんな彼女が主役の座を諦め、「何者でもない」、つまり自分はそこにいて、代わりの効かないかけがえのない自分だと自覚し、逞しささえ身につけたように見えます。そんな変化を遂げた梨々子に「がんばったよね」と声をかけたくなる物語です。

<こんな人におすすめ>

普通の女性の10年間の生き様に興味がある
環境の変化とともに心情に起こる変化は何なのかに興味がある
宮下 奈都のファン

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