こちらは歌舞伎の世界に
身を捧げたある男の人生を
描く物語よ。
歌舞伎かあ。ああいう世界は
血の繋がりが大事なんだろう?
そうね。主人公はヤクザの息子なのだけど
事情があって歌舞伎役者のもとで修行を積む
ことになるの。
ずいぶん波乱万丈な人生みたいだな?
うまいこと歌舞伎役者になれるといいな。
『国宝 (上) 青春篇』 吉田 修一 (著)朝日文庫
あらすじ
長崎で力を持つ立花組の組長・権五郎の息子、十四歳の喜久雄は、新年会の席で女形を演じます。
会場は大いに盛り上がりますが、対抗勢力の宮地組が攻め入り、権五郎は殺されてしまいます。
喜久雄は上方歌舞伎役者、花井半次郎のもとで世話になりながら、半次郎の息子・俊介とともに、半次郎からの厳しい指導を受け、芸の道へと青春を捧げていくのです。
歌舞伎の世界に飛び込んだヤクザの息子
ヤクザの息子に生まれ、普段は大人しいのですが時に荒々しさを見せる喜久雄。
父を亡くし、立花組の力が弱くなっていく中、彼を心配した母親が大阪の半次郎のもとで世話になるよう、手配します。
子供の頃から喜久雄を「坊ちゃん」と呼び、いっしょに悪さもしてきた部屋住みの徳次とともに、歌舞伎の世界へ飛び込みます。
負傷した師匠の代役に選ばれたのは
半次郎の息子・俊介とは良きライバルであり、互いに切磋琢磨していきます。
そんな中、半次郎が事故で両足を負傷。
来週迎える舞台の初日、半次郎が代役に選んだのは喜久雄でした。
何とか舞台をこなした二人ですが、千穐楽の夜、俊介は「探さないで下さい」と書置きを残し、姿を消してしまったのです。
まとめ
歌舞伎の世界が楽しく、ひたすら必死に吸収しようとする喜久雄と、生まれたときからその世界に浸かり、流れる血までもが役者であろう俊介。
二人の個性のぶつかり合い、芸への思い、己へのもどかしさに胸がしめつけられます。
芸という渦の中に巻き込まれていく二人の今後が気になります。
<こんな人におすすめ>
ヤクザの息子に生まれた少年が歌舞伎の世界へ魅せられていく物語を読みたい
歌舞伎や芸能の世界に興味がある
吉田 修一のファン
ヤクザもすごいけど
歌舞伎もすごい世界だな。
彼らの演技に対する貪欲なエネルギーが
本を通してストレートに伝わってくるわね。
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