こちらは学校に行けなくなった
小学六年生の火村ほのかが
図書館で様々な人や本と出会い
変化していく姿を描く物語よ。
図書館かあ。スタッフはさ
『学校行かないの?』なんて
話しかけたりしないのかな。
体の半分が緑色をしたイヌガミさんが
児童書フロアの司書として働いて
いるのだけれど学校についての話は
しないわ。本の話をしたり、図書館の
仕事の手伝いを頼んできたりするの。
そうかあ。居場所が見つかって
良かったじゃないか。とはいえ
ずっと図書館に通うわけにも
いかないだろうなあ…。
『虹いろ図書館のへびおとこ』櫻井 とりお (著) 河出文庫
あらすじ
小学六年生の火村ほのかは、あるきっかけからいじめに遭うようになり、学校へ行けなくなった。
街中をさまよいたどりついたのは古い図書館。
そこには体の半分が緑色をした司書のイヌガミさん、謎の少年スタンビズくんがいて、たくさんの本があった。
彼らや物語たちと出会ったほのかは少しずつ自分の世界が動き出すのを感じて…。
図書館で出会った人々とたくさんの物語
父の仕事でこの街に越してきた小学六年生のほのかは、クラスのリーダー的な女子に意見したことをきっかけに、いじめに遭うようになりました。
先生は見て見ぬふりだし、仕事で疲れ果てて帰ってくる父親や、入院中の母に代わって家事全般をこなす中三の姉にも心配をさせたくなくて、誰にも相談せずにいたほのか。
しかしその我慢も限界を越え、家を出た後学校へ行かず街をさまようになります。
大人の目線を逃れるように動き回り、たどりついたのは図書館。
勉強していますよ、といった体で計算ドリルを開き勉強するほのかに、体の半分が緑色をしたイヌガミさんは特に話しかけることもなく仕事をしています。
次第に図書館での過ごし方に慣れてきたほのかは静かな空気と毎日ひとりでやるドリルにあきてきます。
そこで、大量の折り紙を使ってたくさんの魚を折ることに苦労している様子のイヌガミさんをこっそりと手伝うことに。
家で作ってきた106匹の魚をイヌガミさんがいない隙にダンボールの箱の中に入れたほのかは、ドリルのかげから彼の反応をうかがい楽しみます。
そんなある日、イヌガミさんが「ひまそうですね、ショウネンヒッコー君」と話しかけてきます。
そして図書館でヒマをつぶすいい方法は本を読むこと、と言って一冊の本を置いていきます。
その本を読んだほのかはおなかの底がぽかぽかとあたたかい気持ちに。
それから様々な本を読むようになったほのかですが、ある日突然ほのかのクラスが図書館へやってくることに。
イヌガミさんが慌てて案内してくれたのは保存書庫。
中に入るとそこにはほのかと同じくらいの年か、もうちょっと上かもしれない男の子がいました。
スタンビズ君、と呼ばれた少年もどうやら学校ではなく図書館に通っているようで…。
まとめ
居場所を失った小学六年生のほのかが図書館で出会ったイヌガミさんは「へびおとこ」などと呼ばれていますが、本人はいたってマイペース。
ほのかに学校は?などと質問することもなく、本を紹介してくれたり、図書館の仕事をわりふったり。
傷ついたほのかにとって、疲れた心を休め自分の一歩を踏み出すための力をたくわえることのできる場所なのです。
人の気持ちを知り、自分の心を育て、動く力をつける。
そんな図書館の力を描く、心に沁みる物語。
<こんな人におすすめ>
不登校の少女が図書館に通うことで自分の価値観を広げ新しい一歩を踏み出していく物語を読んでみたい
学校へ通えなくなっている少年少女を本の世界を紹介し、見守る大人たちを描いた話に興味がある
櫻井 とりおのファン
人も本も寄り添ってくれる。
図書館て本当にいい場所だな。
いつでも誰にでも開放されて
いるところがさらにいい。
自分で歩き出すための
力を蓄えることができるのは
優しく見守ってくれる人と
いろんな気持ちを教えてくれる本が
あるからなのかもしれないわね。
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