こちらは無職になった女性に
突然『推し』ができるの。
そこから女性に向けられる
視線や価値観などについて
描かれた物語よ。
フェミニズムについての
小説ってことか?
日本もいろいろありそうだなあ。
おっさんが女性に向けて
発する言動や、そうした価値観を
醸成する社会をわかりやすい形で
知らしめてくれるの。
なるほどねえ。アイドルの
『見せ方』なんてのも
そうした価値感を作り出す一因に
なっていそうだもんな。
主人公はどんな体験をしてどんな
気づきを得たんだろう?
『持続可能な魂の利用』 松田 青子 (著) 中公文庫
あらすじ
男性社員から嫌がらせを受け、会社を辞めて無職になった敬子。
街頭ビジョンに映ったアイドルグループに夢中になる。
日本の女の子たちに求められる、笑顔、従順。
おっさんたちから向けられる視線や無意識の悪意にがんじがらめになった女たちが、アイドルが、そんな日本をぶっ壊す!?
魂を長持ちさせるために彼女たちは「革命」を起こす
さり気なく体に触れたり、周囲が「彼らは付き合っている」と思わせるように敬子に接してくる四十代の男性社員がいました。
セクハラを受けている、と人事に相談した敬子ですが、男性社員が周囲に「付き合っているが感情的で困る」と発言していたため、敬子が別れに不満で文句を言っている、という形に。
さらに非正規社員でもあったため、敬子は会社を辞めることに。
おっさんに疲れ、人に疲れ、世の中に疲れた敬子は笑顔ではなく睨むように強い視線を投げかけてくる女性アイドルグループに惹かれ、夢中になります。
ストレスや悲しみや怒りで魂は減る。
だから私たちは魂を持続させて長持ちさせるために趣味や推しをつくるのだ。
そう考えた敬子は元いた職場の同僚、香川さんをライブに誘います。
香川さんは敬子に起こった一連の出来事に納得がいかず、敬子本人から事情を聞いて憤慨します。
さらにその男性社員本人から話を聞く機会があり、彼女の怒りは心頭に達します。
また、ある音声が流通し話題となります。
それは「うわー また産んでるよ」「なんで産みたいと思えるんでしょうね、確実に育てにくい社会にしているはずなんですけどね」という政治家たちの会話でした。
敬子は、皆川さんは、子どもを生んだ母親は立ち上がり、彼女たちの「革命」がはじまったのです。
まとめ
日本社会における女性への価値観はだいぶきゅうくつなものだったのだなと驚きます。
自身の「女ってこんなもの」という価値観で発言したり接してくる「おっさん」たちに彼女たちは戦いを挑みます。
また敬子が夢中になったアイドルは今までに求められた「かわいさ」「笑顔」とは逆を行くコンセプト。
おっさんたちに作られた彼女たちもまた「革命」のために戦っているのです。
フェミニストって何?という人におすすめしたい物語です。
<こんな人におすすめ>
フェミニズムを描いた話に興味がある
「日本終わってんな」と思っている
松田青子のファン
わああ どこかで起こって
いそうな出来事だな!!
そんでもって政治家の発言が
リアルすぎるんだが…(;゚∀゚)
「そんなものだ」という価値観の中で
傷けられた女性がたくさんいる
ということに気づかされるわね。
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