こちらは生きづらさを
抱える人々が苦しみながらも
生きる道を模索していく物語よ。
生きづらさかあ。
例えばどんな?
男性恐怖症の女子大生や
特定のものに性欲を
感じる人々などね。
なるほどねえ。多様性とは
言われているけれど、昔からの
価値観を押し付けてくる奴らも
たくさんいそうだな。彼らは
どんな道を見つけたんだろう。
『正欲』朝井リョウ (著) 新潮文庫
あらすじ
私立小学校に合格したが不登校になってしまった息子の父親であり、検事である寺井啓喜。
男性恐怖症だが、怖さを感じない男性の存在に心ときめく女子大生・神戸八重子。
ある秘密を抱えなるべく人と関わらないようにしていたが、同窓会で気になっていた同級生と遭遇した契約社員・桐生夏月。
多様性を主張しながら踏み込んでこようとする世間や周囲から逃れることもできず、苦しみながらも生きる道を模索していくそれぞれの姿を描く。
それぞれに「生きづらさ」を抱える人々
小学五年の啓喜の息子・泰希は学校に行くことができず家で過ごす日々。
不登校児のためのイベントで知り合った子どもと泰希が仲良くなり、二人でYoutubeを始めると言います。
いずれ学校に戻るきっかけになってくれれば、と承諾した啓喜ですが…。
大学の学祭の実行委員の八重子は次年度の学祭企画でダイバーシティフェスを提案。
男性恐怖症の八重子が唯一怖さを感じない男性はダンスサークルのメンバー。
気がつけばSNSを巡回し彼の情報を集めはじめ…。
ショッピングモールの寝具売り場で働く契約社員の夏月。
なるべく人と関わらないようにしているが、買い物に来ていた同級生と遭遇。
同窓会に誘われ、ふと彼はどうしているだろうか、と考え…。
まとめ
小学生の不登校Youtuber、男性恐怖症、特異なものに感じる性欲。
多様性だと言いながらも理解不能なものが現れると途端に排除しようとする世の中。
自分が生きているのこの世界で誰からも理解されないこと、一人ぼっちであることがこんなにも苦しく、絶望的なことなのかと愕然とします。
完全にわかりあえなくても待っている人がいる、いなくならずにここにいるということが生きるためのわずかな希望の灯である。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
『常識的』と外れた生き方しかできず苦しむ人々を描く物語に興味がある
多様性を謳いながら人と異なる嗜好や生き方をする人を見つけると排除しようとする社会を描いた話を読んでみたい
朝井リョウのファン
うわああああ
これは夏月たちの気持ちも
よくわかるよな。こうした人々を
理解することを拒否する人間の
なんと多いことよ…
この世に自分をつなぎとめて
おくためにたった一人
待ってくれる人がいればいい。
その関係に名前はつけられないけれど
かけがえのない存在であることは確かなのよね。
2023年11月10日、稲垣吾郎さん、新垣結衣さん主演で全国ロードショー公開されます。彼らの苦しみが映像を通して伝わってくるのでしょうか。
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