こちらは読売の「種拾い」を
している少女が訳あり物件を
紹介する人物と知り合い
様々な物件やそれを借りる人々と
出会っていく江戸のお話よ。
種拾い?週刊誌の記者みたいな
ものか?それに事故物件を
仲介する不動産屋が登場するわけ?
そうなの。事故物件は家賃が
安く済むからということで
意外と需要はあるのね。その分
いろんな「もの」が見えたりするようよ。
うえええ それじゃ
夜も眠れないじゃないか!
しかし幽霊になって現れるとは
かつてのその部屋の住民には
いったい何が起こったんだろうな。
『幽霊長屋、お貸しします(一)』
泉 ゆたか (著) PHP文芸文庫
あらすじ
人々の気を引きそうな毒のある事件が起きると飛んで行って聞き込みをする、読売の「種拾い」をする少女・お奈津。
現場で集めた話は種拾いの元締め・金造が記事の内容を見定める。
ある日、金造から人が死んだ曰くつきの部屋ばかりを紹介する『幽霊部屋の家守』と呼ばれる男・直吉の話を聞く。
直吉の紹介で部屋を借りた者たちを調べるうちに、霊たちの事情を知り…。
江戸の町を駆ける少女記者が、死者の思いと生者との縁を世の人につないでいく物語。
事故物件に幽霊が現れる理由とは
男女のもつれ、強盗殺人、やくざの揉め事。
憂き世の人びとが喜ぶ嫌な話を集めては読売の記事にする「種拾い」をしている少女、お奈津。
殺された被害者の遺族から話を聞いたり、逆に人を殺したことがあるような恐ろしい人物に近寄ったりと、怖かったり嫌な目に遭ったこともなんどもあります。
しかし念入りに隠された「ほんとう」を暴き、筆ひとつで悪を成敗することができる大切な仕事だ、という金造の言葉を信じ、種を拾うために日々江戸の町を駆けまわっています。
そんなある日、金造から人が死んだ部屋ばかりを紹介する事故物件専門の家守がいることを耳にしたお奈津。
『幽霊部屋の家守』と呼ばれている直吉はどこか影のある美しい男。
直吉の紹介で部屋を借りたという大工の半兵衛に部屋の様子をたずねてみると、ある夜から女の幽霊が現れ、部屋の中にはいくら掃除しても長い髪の毛が落ちているのだといいます。
過去の読売を調べていたお奈津ですが、現れる幽霊の姿に違和感を覚えます。
そして幽霊が半兵衛の前に姿を見せた理由とは。
まとめ
江戸の町でゴシップネタの記事を集める「種拾い」の少女・お奈津は、ドロドロした感情や、怒りや悲しみなどをぶつけられながらも、まっすぐな瞳を持ち続ける溌剌とした女の子。
ひょんなことから供に暮らすようになった青い羽の小鳥、ちゅん太郎に心を慰めてもらいながら日々仕事に励んでいます。
直吉と関わるようになってから様々な幽霊を見ることになったお奈津。
死者たちが現れるのは、そこに遺した思いがあるから。
そんな彼らの切ない思いを、お奈津が筆を通して人々に伝えることも。
種拾いとして悩むこともあるけれど、こうした思いを受け成長していくお奈津の姿と、やるせない死者たちの思いがいつまでも胸に残る物語です。
<こんな人におすすめ>
少女『記者』がネタを拾いに江戸の町を駆け巡る話に興味がある
人が死んだ『事故物件』ばかりを扱う江戸の不動産屋を描いた物語を読んでみたい
泉 ゆたかのファン
ひえっとなるけど最後は
なんだかあったかい気持ちに
なるんだな…。
お江戸のドロドロした揉め事と
お奈津のまっすぐさが好対照ね。
死者の思いから我が身の生き方に
目を向けたくなる物語ね。
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