こちらは心がざわざわと
するような、恐怖や絶望を
感じる五つの物語を収めた
短編集よ。
うわあ〜 なんか怖いな。
例えばどんな話があるんだ?
認知症の症状が見え始めた妻と
暮らしている夫のアパートの
隣人が亡くなったの。暑い中
エアコンをつけずにいて熱中症に
なったそう。夫は隣人宛の電気代の
請求書を家の中で発見してしまうの。
その請求書を隣人に渡しそびれ
電気代が払えなかったから隣人が
エアコンを使えずに亡くなったのか?
だとしたら大変なことなんじゃ…
『汚れた手をそこで拭かない』芦沢 央 (著)文春文庫
あらすじ
夫がとらわれている過去から解放させてやりたいと願う余命わずかな妻、認知症が進む妻と電気代が気に掛かる老いた夫、元不倫相手を見返したい料理研究家。
ふとしたことがきっかけで物事が思わぬ方向に転がり出し、気づけば足元が崩れ落ちていくような恐怖や絶望を体感する五つの物語。
夫が胸に抱え続けていた罪の意識とは
末期癌で余命宣告を受けた私は自宅で過ごすことを希望し、それを受け入れてくれた夫に看てもらいながら過ごしています。
夫が長年抱えている苦しみから解放してあげたい、と考えた私は、自分があなたの苦しみをあの世に持っていきましょうか、と提案。
夫が話したのは高校を卒業してすぐに工務店で働き出した頃のことでした。
ちょっとしたことで呼びつけ、文句も多い客から夫が持ち込んだ脚立を売れ、と要求されます。
半年後、その客が脚立から落ち頭を打って死亡。
それが自分のせいだと言う夫。
さらにその時の状況を詳しく聞き出した妻はある推理を夫に聞かせ…(「ただ、運が悪かっただけ」)。
武雄と妻が暮らすアパートの隣人・笹井が亡くなりました。
電気代を滞納し、エアコンをつけずに寝たため熱中症になったのだとか。
電気代、と聞いてピンと来た武雄が家の中を探すと笹井宛の電気代の請求書を発見。
隣のポストに入れておく、と言った妻の言葉を信じてまかせたのですが、妻はこのところ忘れることが多くなってきており、今回も忘れた様子。
自分たちのせいなのか、と気持ちが沈む武雄。
電気料金の領収書なども必ず自分で目を通し保管するようにしていましたが、支払った電気代が妙に安いことに気づき…(「忘却」)。
まとめ
自分のせいだと思い込んでいた出来事が、思わぬ方向からの力によるものが原因だったり、ほんの出来心で起こした行動が、これまでの自分とこれからの自分を破壊してしまうような結果を招いたり。
人間の中に渦巻く欲望や悪意は表面だけでは読み取れず、抱えた挙句に思わぬ形で爆発してしまうもの。
そんな風に感じられる、背筋が凍る五つの物語を収めた短編集です。
<こんな人におすすめ>
保身や油断から取り返しのつかない場所へ追い込まれていく話に興味がある
思いがけない方向から足元をすくわれるような恐怖を味わってみたい
芦沢 央のファン
うわあああ こんな風に追い詰められるのは
嫌だあああ!!あそこで引き返せば
良かった!!と登場人物たちも思って
いるんじゃないか?
思わぬところで足をすくわれる
予想外の方向からやってくる
恐怖に震える物語ね。
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