こちらは陶芸家が偶然焼き上げた
美しい青い壺が様々人の手に
渡っていくお話よ。
ほほう。壺を手にした人たちは
どんな人生を送っているんだ?
医師の妻やその娘、
泥棒に盗まれてから老女へ、
その孫娘からスペインに行き
最終的に陶芸家と再会を果たすの。
ほほう それはなんとも
ドラマチックな!!
壺が見てきた人々の生き様が
気になるな。
『新装版 青い壺』有吉 佐和子 (著)文春文庫
あらすじ
陶芸家として著名であった父に反発し、地道に焼き物の製作を続けている省造は、ある日美しい青磁の壺を焼き上げた。
壺はデパートで売られ、変われ、盗まれ十余年後に思わぬ形で再び省造と対面する。
壺を手にした人々は何を思いどう生きてきたのか。
青い壺が映し出す彼らの人生とは。
美しい壺が見てきた 数々の人生
様々な条件が重なったからか、これまでにない見事な青磁の壺を焼きあげた省造は妻と喜びます。
出入りの業者がこの壺を目に留め引き取りたい、と言います。
手元に置いておくか悩んだ省造ですがいつも世話になっているかと、と預けようとします。
しかし「古色を付けてくれ」と言われ何とも言えない心持ちに。
そんな省造を見て、妻は彼が出かけて位いる間にデパートの担当者に壺を売ってしまったのです。
デパートは古色をつけないから、と。
省造は口にできない思いを胸に抱くのでした。
壺はデパートで売られ、定年退職した夫にウンザリした妻が購入し、お世話になった常務へお礼方々渡していらっしゃい、と夫に持たせます。
壺は常務の妻へ、妻から老いた母を持つ娘へ、娘から医師へ、泥棒に盗まれ、同窓会に参加した老女へ、老女から孫娘へ、孫娘からスペインに発つシスターへと渡り、「先生」の手に。
そこへ挨拶に訪れた省造は思いがけず自分の作品と対面することに。
しかし、省造が「自分が焼いた」と主張しても先生は「これは君の作品ではない」と認めようとせず…。
まとめ
壺を手にした人々の人生をそれぞれに描きあげる物語。
定年退職した夫が家にいることが苦痛でたまらない妻、ほぼ失明している実母と二人暮らしをはじめた独り身の娘、嫁にいった娘から早く死んでほしいと言われた母親、五十年ぶりに同窓会に参加した老女、自分が卒業したミッション系の私立小学校で栄養士として働く若い女性、スペイン出身で神に身を捧げてきたけれど母の病の知らせを受け、母に会うために五十四年ぶりに帰国することになったシスター。
それぞれが家族を持ったりして、置かれた状況で懸命に生きてきた様子が伺えます。
偶然生まれた青い壺は不思議と何かの役割を終えると次の人のもとへと渡っていくようです。
歳を取ること、生きていくこと、変化していくつながりや関係。
まさに人間の数だけドラマがあり、それを丁寧に映し出す、読後に深い余韻の残る物語です。
<こんな人におすすめ>
無名の陶芸家が生み出した壺が見てきた様々な人生を描いた話に興味がある
人間の奥深くに潜んだ心理を鮮やかに映し出す物語を読んでみたい
有吉 佐和子のファン
本当にいろんな人生があるよなあ。
そんでもって一つ一つが
深くて…。壺が次の場所に移動しても
その人の人生は続いていくんだよな。
最後に再会した壺の変化が
興味深いわね。様々な人の生き様を
垣間見てきた壺だからこそ
現れた色合いなのかもしれないわ。
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