こちらはおしゃれで立ち回りのうまい
「チャラ男」と呼ばれる男性を
取り巻く人々の姿、そして彼自身の
思いを描いていくお話よ。
ああ そういうのいるよなあ。
おいしいとこだけ持っていく
ような奴だろ?
そうね。弱い立場の人間には
高圧的に出てみたり
社内の人間関係を見極めて
どう動くかを心得ている部分は
あるわね。
わあ やなかんじだな。
そんなチャラい奴の仕事ぶりや
振る舞いを見て周りの社員が
どう感じているのか気になるな。
『御社のチャラ男』絲山 秋子 (著)講談社文庫
あらすじ
地方都市にあるジョルジュ食品は、オイルやビネガーを取り扱う小さな会社。
社長のコネで四〜五年前に我が社へやってきた三芳部長は、その立ち回りの上手さ、身ぎれいさから社内でひそかに「チャラ男」と呼ばれている。
彼自身の思い、そして周囲の人々から見た彼の姿から社会が、そして自分自身が見えてくる。
お洒落で世渡り上手な「チャラ男」こと三芳部長
三芳部長は東京の会社で働いていたところをジョルジュ食品の社長にヘッドハントされて入社。
背は低いけれどいいスーツと時計を身につけていて、見栄っ張りだけれどお洒落でもあります。
中堅の岡野からすれば見習うこともあるかな、という存在。
50代にして中途で会社に入ってきた山田からすれば、勝負してはいけない相手。
総務課の若手女性社員、池田かなこから見た三芳部長は若者を過剰に意識したウザい人物。
高校時代から付き合ってきた恋人と長すぎる春を終えた33歳の一色素子にとっては「推し」。
システム関係担当の森からすると内容を理解せずに無理難題をふっかけてくる人物。
しかし、当の本人である三芳部長は自分がない、友達も才能も、キャリアも何もない男だと自分を評します。
そんな彼は妻が自分を丸ごと受け入れてくれたことで救われます。
その三芳部長に反発したり、腹立たしい思いをしながら働く社員たちも少しずつ意識に変化が生じていきます。
そしてこのまま続いていくと思われていたジョルジュ食品にも思わぬ風が吹いてきて…。
まとめ
地方の食品会社で働く人々を描いた物語。
コネ入社で見た目はお洒落、パワーバランスを理解し上手いこと立ち回る「チャラ男」こと三芳部長を、様々な立場の社員たちが語ります。
ある者は、古い体質の会社経験から社会を変えていきたい、と考えたり、この猿山での縄張り争いがもはや安心する、と考える者もいたりします。
一人の人間に注目することで、それまで会社の一部として認識され、思考を停止させていた部分もあった彼らが、自らの頭で考え、感情を動かし、行動に移していくのです。
自分がない、という三芳部長は実は彼ら社員自身の姿であったのかもしれません。
そんな「チャラ男」を通して見えてくる世の中や、自分自身の姿にハッとする会社員小説です。
<こんな人におすすめ>
様々な立場の社員が立ち回りの上手な部長を目にして改めて自分に向き合う話に興味がある
小さな会社で働く人々のそれぞれの思いや悩みを丁寧に描いた話を読んでみたい
絲山 秋子のファン
『自分がない』と言っている
チャラ男が社員たちの動き出す
きっかけになっているところが
おもしろいな。
チャラ男を通して自分自身の
内面や社会の姿が見えてくる
会社員小説ね。
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