こちらはショートケーキに
まつわる様々な人間模様を
描いた5編の短編集よ。
シートケーキかあ。
老若男女に人気があって
ちょっと特別感があるよな。
あの紅白の色合いがめでたい
感じで。
そうね。ある親友同士の女性は
ともに両親が離婚していて
母親と二人暮らしなの。そんな
彼女たちにとってホールケーキは
特別な存在で、何かがあると二人で
買って食べたりしているの。
確かになあ。母と娘の二人暮らしだと
ホオールケーキは大きすぎるよな。
ケーキひとつにもみんないろんな
思いがあるもんだな。
『ショートケーキ』坂木 司 (著)文春文庫
あらすじ
もうすぐ二十歳になる私たちはやりきれないときに二人でケーキいを食べる(「ホール」)。
バイト先に現れる、二人の天使たちはこだわりがあるようでホールケーキだけを購入していく(「ショートケーキ」)。
白くて甘くてふわふわで、イチゴの載ったショートケーキはいつも売っていて、でもちょっぴり特別感もあって…。
そんなショートケーキにまつわる5編の連作短編集。
ホールケーキには特別な意味がある
小学校の頃親が離婚したゆかは高校で家庭環境が同じであるこいちゃんと親友になります。
お互い一人っ子で母親と二人暮らしの彼女たちは、この環境でホールケーキを買うことってないよね、という話になります。
買えないわけではないけれど、残す前提で生っぽいケーキを買うのに抵抗を感じるのです。
キレてないのがいいのに!と怒りを感じたゆかは、こいちゃんに「ホールケーキを買いに行こうよ」と提案。
それから家庭環境でやりきれなさを感じると二人でホールケーキを買い、食べるように。
大学生になったある日、こいちゃんから父親との面会が終わりになるかも、と告げられたゆか。
もうすぐ二十歳になるため、父親は養育費を払わなくてもよくなるから、と言います。
もうすぐ誕生日を迎えるゆかも父親との次の面会が最後になるかもと思いながら挑んだところ、父親はこれまで行かなかったような店で高いメニューを注文し、おまけにデザートのショートケーキまで…。
やはり、という思いと何をどう言われるかという思いが複雑に絡まり合い、ケーキをフォークでぐさぐさと突き刺していると、父親が心配そうに見つめてきて…(「ホール」)。
まとめ
不幸ではないけれど少し欠けたような、うまく言葉にできない気持ちや自分の思うようにはいかないままならない状況。
そんな場面に登場するショートケーキは幸せの象徴であり、心を癒してくれる存在でもあります。
誰かを思い、ケーキを買う人、売る人それぞれが食べる人の笑顔を願っているということを感じます。
特別感があって、それでいていつも変わらずそこにいるショートケーキをめぐる人々の幸せをちょっぴり分けてもらったような、あたたかな気持ちで満たされる物語です。
<こんな人におすすめ>
ショートケーキに救われる思いを抱く人々を描いた話に興味がある
人の優しさに心がほんわかと温かくなる物語を読んでみたい
坂木 司のファン
うお〜 なんかケーキが
食べたくなってきた!
ケーキを売る人、食べる人を
思い浮かべながら買う人。
みんなの幸せを感じながら
おいしく楽しめる物語ね。
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