こちらは「むらさきのスカートの女」と
呼ばれる女性の観察を続ける女の視点で
描かれる物語よ。
観察を続ける?
その女性に憧れているのか?
それともストーカー的な?
同じ職場になるように誘導したりも。
観察しているうちに、「むらさきの
スカートの女」の様子が変わっていくのよ。
何があったんだろうな。
観察してる女の正体も
気になるところだ。
『むらさきのスカートの女』今村 夏子 (著) 朝日文庫
あらすじ
私の家の近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。
この女性のことが気になるわたしは彼女の行動を観察している。
わたしと同じ職場で働くようになった彼女は、すぐに仕事を覚え、先輩たちからも好感を持たれている様子。
やがて彼女と上司の不倫が噂されるようになり、彼女の態度もこれまでと違ってきて…。
変わっていくむらさきのスカートの女の姿に…
むらさきのスカートの女は、そう若くはなく週に一度パン屋でクリームパンを買い、公園の「むらさきのスカートの女専用シート」と名付けられたベンチに座り、パンを食べます。
町の中ではひそかに有名な人物ですが積極的に近づこうとする人はいません。
姉や知人にも似ていると感じている「わたし」は彼女のことが気になり、観察しています。
さりげなく誘導した結果、「わたし」の職場であるホテル清掃員として働くことになった彼女。
最初は小さな声で喋っていた彼女は大きな声であいさつするようになり、仕事を覚えるスピードも早く、すぐに一人で清掃できるように。
肌もふっくらと色つやも良くなり、自信に満ちているようにも見えます。
そんな彼女に所長との不倫の噂が出ます。「わたし」は真実を確かめようとしますが…。
まとめ
むらさきのスカートの女を執拗に追い、影から見守る「わたし」。
積極的に関わるのでもなく、それでいて彼女のためになるであろうことを、時にそれはどうかと思うような手段も使いつつ実行していきます。
「わたし」はむらさきのスカートの女の運命を握ることにより、その存在を自分と一体化したかったのかもしれません。
彼女に対する観察・分析と実際の行動のちぐはぐさに背筋が薄ら寒くなる物語です。
<こんな人におすすめ>
一人の女性を執拗に観察し追い続ける話に興味がある
気になる人物への奇妙な関わり具合が不穏な空気を生み出す物語を読んでみたい
今村 夏子 のファン
なんか怖い!!
こんだけのことしてあげてるのに
なんで直接関係を持つことに
力を入れないのか!?
相手を崇拝することもないけれど
興味を持って観察し続ける行為に
底知れぬ恐ろしさを感じるわね。
「わたし」がなりたかったのは
どんな自分なのかしら。
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