こちらは同姓同名の人物が
殺人事件の犯人だったために
人生の歯車が狂ってしまった人たちを
描くミステリーよ。
殺人犯と同姓同名かあ。
そいつは気の毒だよなあ。
どんなことが起こったんだ?
大学推薦の話が取りやめになったり、
内定取り消しになったり。
当時十六歳の少年だった犯人は
週刊誌が名前を明らかにしたけれど
顔写真が出なかったことで
同世代の同姓同名者たちが周囲から
嫌悪の目で見られたりするわ。
なんと!気の毒すぎる…
せめて犯人の顔が画像で
明らかになっていればなあ。
『同姓同名』下村敦史 (著) 幻冬舎文庫
あらすじ
サッカー部で活躍する大山正紀は高校三年生。
大学からスポーツ推薦の話もあり、プロサッカー選手への道を進んでいた。
そんな中、六歳の少女がナイフでめった刺しにされ殺される事件が発生。
日本中を騒がせた犯人の名前は大山正紀。
サッカー推薦が取りやめになった大山正紀、コンビニで働く大山正紀、アニオタの大山正紀など同姓同名であるがゆえに己の人生が狂い出した十人の大山正紀は『「大山正紀」同姓同名被害者の会』で出会う。
そして「相手を転落死させた」として出頭してきた大山正紀を逮捕。
被害者の男性は大山正紀だった…。
凶悪犯の名前の公表で人生が変わった同姓同名者たち
公衆トイレで少女が惨殺された事件は、その凄惨さと犯人が十六歳の少年であることで日本中を騒がせました。
そしてある週刊誌が犯人の名前を公表します。
その名前は「大山正紀」。
日本中に知れ渡ることになった「大山正紀」は名もなき「大山正紀」の日常にも衝撃を与えます。
サッカー推薦の取り消し、バイト先の先輩から発せられる嫌悪感、内定の取り消し…。
一人の大山正紀が同姓同名被害者の会を結成し、十名の大山正紀が顔を合わせ、それぞれの苦境を語ります。
しかし刑期を終えた大山正紀が出所したことで再び彼らは苦しむことに。
犯人の大山正紀をつかまえて顔を晒す、と計画を立てた彼らですが…。
まとめ
名前に振り回されてしまった大山正紀たち。
あおる報道、ヒステリックに叫ぶツイッター民、先入観で彼らを見る周囲からの視線。
表面的に正義を語る人々が気に入った情報だけを取り入れ、言葉を投げつける姿に背筋が寒くなります。
情報に踊らされると真実が見えづらくなる。
そんな風に感じ入るミステリーです。
<こんな人におすすめ>
凶悪事件の犯人と同姓同名であることで運命が狂ってしまった人々を描いたミステリーに興味がある
犯人が実名報道されない理由やそのことで起こる問題を知りたい
下村敦史のファン
自分が当事者として巻き込まれたら
冷静に判断したりできないだろうなあ。
名前のせいでこんな思いをするなんて
理不尽すぎるぜ。
実名報道についての問題とか
正義感という名の言葉のナイフで
攻撃してくる人間など、いろいろと
考えさせられるミステリーね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。