こちらは銀座の老舗文房具店を
訪れるお客たちが思い出の文具や
店主の言葉で心がほぐれていく
物語よ。
ほう 銀座の老舗文房具ねえ。
なんだか敷居が高そうだが。
店主は三十代半ばで落ち着いた
雰囲気で客に丁寧に寄り添ってくれるの。
また購入したその場で手紙を書けるようにと
スペースも提供してくれるのよ。
なんだか居心地のいい空間の
ようだな。客たちはどんな文房具と
自分の心の中の答えを探して
いるんだろう。楽しみだぜ!
『銀座「四宝堂」文房具店』上田 健次 (著) 小学館文庫
あらすじ
創業天保五年。
銀座の一角に佇む老舗の文房具店・四宝堂。
三十代半ばの青年・宝田硯が一人で切り盛りするこの店には様々な思いを抱えた客がやってくる。
自分を育ててくれた祖母に感謝の気持ちを伝えたい青年、退職願を今日中に書きたいという女性、亡くなった元妻への弔辞を考える…。
思い出の文房具や店主の言葉で客たちの心がやわらかくほぐれていく。
大切なものを思い出させてくれる、胸があたたかくなる物語。
お客の気持ちに寄り添う 銀座の老舗文具店
初任給で祖母に何かを買って送りたい。
そう考えて銀座の百貨店へ向かった新田凛は、商品とともに手書きの礼状を添えると良い、と店員にすすめられ、四宝堂を紹介されます。
落ち着いた佇まいで迎えてくれた店主・硯に事情を話し、レターセットを選んだ後、店の二階で書かせてもらうことに。
どっしりとした机を前に、革張りの椅子に腰を下ろし、十歳のときに祖母からもらった万年筆を握った凛は、祖母と暮らしていた日々を思い出します(「万年筆」)。
銀座のクラブで働くユリが四宝堂を訪れると、何と店は休業日。
肩を落としていると運良く店主の硯が現れ、店内へ案内してくれました。
店を辞めたいという事情を聞いた硯は、まずは上司であるママに相談するべきでは、と話しますがユリの決意は変わりません。
いつも手にしてきたファイロファックス のシステム手帳、クロスのボールペン、そしいて硯に用意してもらった便箋と封筒を前に、ママとの思い出に涙を零すユリでしたが…(「システム手帳」)。
まとめ
仕事に、勉強にと日常的に手にして使い続ける文房具は、自分の一部と言えるものなのかもしれません。
手を使って、自分の頭の中を文字や絵にしていくことで自分の土台を築いているのです。
そんなお客さんたちの気持ちに寄り添い、場所と商品を提供し、そっと見守る老舗文房具店には小さな感動がたくさんつまっています。
<こんな人におすすめ>
問題を抱えるお客に寄り添い、場所や文具を提供する文具店の話に興味がある
文房具が好き
上田 健次のファン
いいねえ!俺もレターセット買って
店長にお茶とお菓子をごちそうに
なりながらここで手紙書きたい!!
商品の豆知識も得つつ、大切な人との
思いをつなぐ文房具と人々の心を描く
心が温かくなる物語ね。
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