こちらは低い賃金で働く29歳の女性が
ポスターにあった世界一周旅行の代金と
自分の年収がほぼ同じであることに気づき
そのためにお金をためはじめる物語よ。
世界一周!!いいねえ。
お金をためたいなら他のところで
働くという発想はないのか?
主人公は前の職場を人間関係のトラブルで
やめているの。今の職場は人間関係が
良いので続けているわ。
なるほどね。29歳という
年齢も、いろいろと考える
ことがありそうだな。
『ポトスライムの舟』津村 記久子 (著) 講談社文庫
あらすじ
時間を金で売っているような気がする。
そう感じながら薄給の工場勤務を続ける29歳のナガセ。
ある日、工場の掲示板に貼ってある、あるNGOが主催する世界一周クルージングのポスターが目についた。
その参加費費用、163万円がこの工場の年間の手取りとほぼ同額であることに気づいたナガセは、その金額を貯めようと決意する。
大学時代の友人たちとのやりとり、母との二人暮らしに訪れた変化とお金の価値。
仕事とお金、そして人生をユーモアのある文章で描く物語。
仕事とお金の「価値」とは
前にいた会社を辞め、工場で働くナガセ。
給料は安いが人間関係が良いため続いています。
工場勤務が終わると友人が経営するカフェでパート、家でデータ入力の内職もしています。
母親と二人で暮らす古びた家の修繕費用を何となくためていたナガセ。
しかし、時間を金で売っている、と感じると働くことに嫌気がさしてしまいます。
そんな時に見かけた世界一周クルージングのポスターに、参加費用163万円と大きく書かれているのを目にしたナガセは、その額が工場勤務の年収と同じことに気付きます。
このクルージングのために貯金することを決めたナガセ。
ある日、大学時代の同級生、りつ子が娘の恵奈を連れてナガセの家にやってきました。
夫と離婚したいというりつ子は仕事と住まいが見つかるまでナガセの家で暮らすことに。
ナガセの母は恵奈を可愛がり、あちこち連れていきます。
ナガセもポトスライムの話をしたり、いっしょに紅茶を飲んだりと少しずつ恵奈との距離を縮めていきます。
やがて正社員として職を得たりつ子は恵奈を連れて出ていき、再び母との二人暮らしにい戻ったナガセ。
五月中ごろから咳がよく出るようになったナガセは、母から病院に行けと言われても放っておいたところ、工場帰りのバスの中で気を失ってしまい…。
まとめ
生きるための費用を稼ぐための労働。
生きるためのお金。
人生に欠かすことのできない仕事と金ですが、その果てしない営みに嫌気がさしてしまう主人公。
しかしその価値の見方が少し変わるような出来事が、何も変化がないように見える日常の中にあるのです。
鎧のように感じることもあるけれど、目的を達するための有効な手段でもある仕事とお金。
逃れることのできないこれらは決して悪いばかりのものではないのだということを感じさせてくれる物語です。
<こんな人におすすめ>
生きるために薄給の職場で働く女性を描いた物語を読んでみたい
仕事やお金の価値について考えさせられる話に興味がある
津村 記久子のファン
淡々と進む日常の中にも
お金や仕事の価値観を変える
ヒントがいくつもあるものなんだな。
お金や仕事に対して無意識のうちに
縛られていた自分を解放するきっかけが
友人や家族とのやりとりの中に
あったりするのよね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。