こちらは「病棟」シリーズ
第三弾よ。ある女医が
女子刑務所の勤務医になるの。
そこにはさまざまな事情を
抱えた受刑者たちがいるわ。
ああ、あの不思議な聴診器を
当てると患者の事情や心の声が
聞こえてくるってことね。
刑務所ということは、患者は
犯罪を犯した人たちってことか。
そうなの。生活に困窮し
430円の惣菜を盗んで懲役二年
という女性もいるわ。状況を
改善すべく金髪の女医が
奮闘していくの。
えっ たった430円で懲役二年!?
まあ盗みと言えば盗みなんだけど…
その受刑者は出所した後、どんな風に
生きていくのか心配になるな。
『懲役病棟』垣谷 美雨 (著)小学館文庫
あらすじ
暴走族だった過去を持つ、金髪の女医・太田香織は半年の任期で女子刑務所の勤務医に。
後輩から餞別にと渡された聴診器を使うと、何と患者の過去や思いが聞こえてくる。
同じく派遣されることになったベテラン看護師・松坂マリ江とともに、受刑者と個人的に接してはならないという禁を破り、彼女たちの進む道を拓いていく。
不思議な聴診器が思わぬものを医師に聞かせる「病棟」シリーズ第三弾。
惣菜四三〇円の万引きで懲役二年
六十二歳の谷山清子は万引き意を繰り返し、惣菜四三〇円の万引きで懲役二年を科せられました。
夫とは離婚、息子も結婚して手が離れています。
パートをクビになり、生活に困り惣菜を万引き。
息子も親が犯罪者では恥ずかしいと思っているらしく身元引き受け人になってくれそうにありません。
一方、女子刑務所の勤務医となった香織は、微熱の出た清子を診療することに。
後輩から渡された聴診器を清子の胸に当てると、彼女の思いが聞こえてきます。
惣菜を盗んだくらいで刑務所に入るなんて、と驚く香織。
六十五歳以上の受刑者の九割が万引きだと言う刑務官の言葉に、看護師のマリ江も驚きの声をあげます。
退勤後、香織はマリ江の部屋で夕飯をいっしょに摂りながら清子のことについて語り合います。
清子は心根が優しく、息子を思う母親であり、貧乏という状況のために犯罪へと走ってしまった被害者である。
そう判断した香織は、何とか清子の息子と接触を図れないかと考えはじめます。
まとめ
暴走族に入っていた経験はあるものの、育ちはお嬢様である香織は犯罪者に対して「暴力的だ、考えが甘いから犯罪に巻き込まれる」などと先入観を持っていましたが、様々な女性受刑者と接するうち、やむにやまれぬ事情から、犯罪に手を染めるしかなかった、という背景を知ります。
そこからは一転して、受刑者と個人的に接してはいけないというルールそっちのけで彼女たちの家族に連絡を取り、出所後の道を拓く助けをしていきます。
罪を犯すことなく生きていける社会とはどんなものなのか。
そのために何ができるのか。
そんなことを考えさせられる、感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
女子刑務所の受刑者の実態と罪を犯した背景を描く物語に興味がある
『後悔病棟』『希望病棟』を読んだ
垣谷 美雨のファン
出身はお嬢様、金髪元ヤンの
女医とハッキリ物言う看護師の
コンビが絶妙だな!!
それにしても彼女たちは
追い詰められて犯罪に走って
しまったんだなあ。
刑務所での様子などもよく
わかるわよね。そして再犯を
犯す事情などにも触れているわ。
何よりも犯罪に走ることなく
安心して暮らせる社会であることが
大切なのだと感じる物語ね。
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