こちらは戦後に放送された
ラジオドラマに出演する
子供たちと制作する大人たちを
描いた物語よ。
子供たちが出演するのか。
それってオーディションとか
して選ぶわけ?
小学生数名が声をかけられて
滑舌や発声の訓練を受けて
いくの。参加する小学生も
裕福だったり、生活に苦労していたり
様々な事情の子たちがいるわ。
そうか。戦後だもんな。
子供たちはラジオドラマを通して
何を見て感じていたんだろうな。
『鐘を鳴らす子供たち』古内 一絵 (著) 小学館文庫
あらすじ
昭和二十二年五月。
あらゆる物が不足し、子供たちはいつもお腹を空かせていた。
峰玉第二小学校に通う六年生の良仁は、同じ学校に通う数名の子供たちとともに、ラジオ放送劇「鐘の鳴る丘」に出演することに。
その収録で、良仁たちは大人たちの作品づくりにかける情熱、戦争への後悔を抱き続ける姿を目にし、彼らとともに未来の希望へ向けて模索する。
子供たちが「主役」のラジオ劇
隣の組の担任、菅原先生が良仁の家へやってきました。
いたずらがばれたか、宿題を忘れたかと叱られる心あたりがありすぎる良仁は戦々恐々としていましたが、菅原の話は良仁にラジオ劇に出てほしい、というものでした。
学校で四月に上演した劇で代役をつとめた良仁の姿が良かったのだとか。
兄の茂富からの後押しもあり、出演することを決めた良仁。
勉強のできる親友の祐介、プライドの塊のような世津子と勝、真面目に演技に取り組む実秋、滑舌の良い都、のちに不良のような将太も加わり、訓練をはじめます。
発声訓練を担当するのはその厳しさで子供たちから「鬼ばば」と密かに呼ばれている重子。
しかし彼女は厳しいだけでなく、その練習にどんな意味があるのかを丁寧に教えてくれます。
撮影場所であるNHK東京放送会館はGHQの管轄下。
米兵の姿も多くみられ、脚本家の菊井や演出の牛山などの大人たちもどこか肩身が狭そうに見えます。
そして良仁たちの演じるラジオドラマ「鐘の鳴る丘」の内容が発表。
ドラマに登場する子供たちは戦災孤児。
彼らを救いたい、更生させたいという願いをこめて作られた物語でした。
まとめ
終戦から二年。
物は不足し、戦争で親を失った子供たちが劣悪な環境で物乞いや盗みをしながら必死に生きている。
そんな状況を生み出してしまった大人たちの後悔は、ラジオドラマを通して希望はあるのだ、という思いを乗せて聴くものたちに向けて訴えかけていきます。
話の内容、意図を理解しぐんぐんと成長していく子供たちの姿は、制作する大人たちの目にも希望の光として映っていたのではないでしょうか。
敗戦という暗い空気の中に高らかに響く鐘の音と、澄んだ子供たちの声が未来へ踏み出す第一歩を感じさせる、感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
太平洋戦争後の日本の空気や葛藤する気持ちを抱く大人たちを描いた話に興味がある
戦後のラジオドラマに挑む子供達が、力強く成長していく姿を描いた物語を読んでみたい
古内 一絵のファン
子供達ががんばっている姿
成長している姿って
大人にとっては希望そのもの
だよな。
混沌とした世の中で
一筋の光が差すように感じられる
あたたかな余韻が残る物語ね。
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