こちらは老舗映画会社で
働く人々を描いた『キネマトグラフィカ』
の続編よ。買収が決まった会社の中で
社員たちがそれぞれの立場で自分の働き方を
見つめ直していく物語なの。
前回は「平成元年組」と呼ばれる
同期たちの話だったな。
彼らは登場するのか?
彼らも社内、社外から様々な立場で
登場するわ。40代独身でDVD宣伝担当の
江見が新企画を立ち上げることで
周りの人々に様々な影響が広がっていくの。
へええ。どんな企画だったのかな。
それで周りがどんな風にその仕事に
関わっていったのか気になるぜ。
『二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ』
古内 一絵 (著)創元文芸文庫
あらすじ
2019年4月。
新元号、「令和」が発表されたこの時、老舗映画会社・銀都活劇で働く砂原江見は岐路に立たされていた。
銀活が大手映像配信会社に買収されることが決定し、会社の企画は進行が止まる。
先行き不安な空気が漂う中、DVD宣伝担当の江見はこれまでの仕事を振り返り、ある企画を立ち上げる。
これまで仕事とこれからの働き方を見つめ直す
中途採用で銀活に入社した江見。
二十年近く勤め、四十代半ばになります。
映画宣伝チームからDVD宣伝チームに異動となり、自分よりも若いメンバーたちと仕事をしています。
映画業界の興行収入の減少、小さな映画館の閉館などの影響で銀活の経営状況も思わしくなく、ついいに大手映像配信会社に買収されることが決定。
弛緩した空気と不穏な空気が社内を漂う中、江見はこれまでの仕事や人生を振り返り『デジタルリマスター、ブルーレイ&DVD販促企画 さよなら銀活 九〇年代トリビュート』という企画を立案。
上司である、とことん事なかれ主義の『マナバヌ』こと葉山学には「付加価値がないから却下」と一蹴されてしまう江見。
そんな中、あるイベントの前日に致命的なミスが発覚。
青ざめる学が社に駆けつけると、連休中の閑散とした社内にいたのは江見。
学からミスの内容を聞いた江見は落ち着いた声で部下に連絡を入れます。
呼び出された前村譲は、文句を言いながらキーボードを叩き始め…。
まとめ
「失われた世代」である江見が銀活に入るきっかけとなった出来事から現在の仕事ぶりまでをプライベートを交えつつ描いていきます。
九〇年代トリビュート企画では「平成元年組」のメンバーも登場。
良い作品を伝えたいという、損得勘定を抜きに突き動かされるようにして働いてきた人たちの仕事が風を生む。
そしてその風は多くの人を巻き込んで、誰かの眠っていた情熱を呼び覚ます助けとなるのかもしれません。
仕事とは、働き方とは何かを教えてくれる、宝物のような物語。
<こんな人におすすめ>
元号が変わり移りゆく時代の中で、映画会社に勤める様々な世代の社員たちの働き方に焦点を当てた物語を読んでみたい
前作『キネマトグラフィカ』を読んだ
古内 一絵のファン
前作『キネマトグラフィカ』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
この中に出てくる人物、
絶対リアルに存在していると
思うんだよな… 仕事への価値観も
ずいぶん変化してきたんだと
改めて感じる。
効率化が重視される世の中で
働くことへの「熱」は失われて
いったのかもしれないわね。
でも自分の根本にある「熱」を
思い出せたのならいつでも
自分が自分としていられる仕事に
出会えるのではないかしら。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。