こちらは三人の男性を殺害した
13歳の少女による事件と
女子高生の髪が切られる事件が
奇妙なつながりを見せていく
物語よ。
13歳で三人も!?
それってかなりヤバイ奴だな。
おまけにその年齢だと…
そうなの。犯人である13歳の
少女はそのことを自覚しているわ。
犯行の様子を動画に残しているのだけど
年齢に触れて「今しかない」と発言して
いるのよ。
動画撮影!?
なんかいろいろ怖すぎなんだが…
果たして更生できる余地は
あるんだろうか。
『不可逆少年』五十嵐 律人 (著)講談社文庫
あらすじ
狐の面を被った十三歳の少女が三人の成人男性を殺害し、一人の女子高生に重傷を負わせたフォックス事件は、日本中を震撼させた。
家庭裁判所調査官の瀬良真昼はこのフォックス事件を扱う青葉家庭裁判所で働いている。
フォックス事件を担当した前任者は辞職したという。
真昼は女子高生の黒髪をハサミで切り落とすという犯罪を起こした男子高校生、佐原漠の担当になる。
彼の父親はフォックス事件で殺害された成人男性の一人だった。
十三歳の殺人犯は教育で更生することができるのか
刺殺、撲殺、絞殺。
そして最後に自分の姉にニコチンを注射。
狐の面を被った十三歳の少女は、犯行の様子を動画投稿サイトを通して拡散。
画面内では「人を殺してドキドキしたい。十四歳になってから殺すと罰せられちゃうんだって。だから、今しかないの。」と発言しています。
真昼の上司である早霧は神経犯罪学に詳しい人物。
脳の構造上の問題が原因の少年犯罪者に対し、教育によって少年を更生させようとするやり方は相容れない、と発言。
フォックス事件を起こした少女もそのような存在なのではないか。
調査官としての自分のあり方を考えさせられるような早霧の意見に戸惑う真昼。
そんな彼は、長い黒髪の女子高生を狙った連続髪切り事件の犯人、佐原漠を担当することに。
事件の内容と本人の様子に違和感を覚えた真昼は、改めて漠の周辺を調べるのですが、漠の父親がフォックス事件で殺害されていたり、ニコチンを注射された女子高生と漠が同じ高校だったりと思わぬつながりが見えてきます。
まとめ
少年の心の奥底に潜む、罪を犯してしまうかもしれないという恐怖に真摯に寄り添う調査官の真昼。
少年は誰しもやり直せる力を持っている、といいう信念のもと取り組んでいますが、そうした信念を覆すかのような殺人犯と神経犯罪医学の理論に心が揺らぎます。
調査官という仕事と法の問題点に触れながら、中盤以降は二つの事件が複雑に絡み合ったミステリー仕立てにもなっています。
少年犯罪が起こる経緯、そしてその後の法がどう彼らを守り、教育していくのか。
いろいろと考えさせられる、多くの人の手に取ってもらいたいミステリーです。
<こんな人におすすめ>
法で裁かれない十三歳の殺人犯と向き合う家庭裁判調査官の物語に興味がある
罪を犯す少年は更生可能なのかをテーマにした物語を読んでみたい
五十嵐 律人のファン
本当に更生可能なんだろうか…
それを信じて少年たちに
寄り添う真昼もまた自分の内面と
戦っているんだな。
法律の内容が現状に合っているのかどうか
活発な議論が必要なのかもしれないわね。
そして彼らを信じて見守ることも
大人の役目なのかもしれないわ。
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