こちらは双子の姉が自殺した
理由を探るために大衆演劇の
世界へ足を踏み入れた弟・伊吹の
物語よ。
姉の死と大衆演劇って
どんな関係があるんだ?
姉は亡くなる一週間前、
鉢木座の芝居を見ているの。
伊吹は何か理由があると考え
話を聞きにいくのだけれど
逆に芝居をしないかと誘われるのよ。
へえ?じゃあ伊吹は俳優の
素質があるってことなのか。
この世界でやっていけるのか。
それと姉が胸に抱いていたことは
なんだったんだろう。
『紅蓮の雪』遠田 潤子 (著)集英社文庫
あらすじ
自分のことをいちばん理解してくれた最愛の双子の姉が自殺した。
姉の朱里が死を選んだ理由を探ろうと、弟の伊吹は大衆演劇の鉢木座を訪れた。
命を絶つ一週間前、朱里はこの舞台を見ていたのだ。
座長にその才能を見初められ、鉢木座に入座した伊吹は己自身にある問題を抱えていた。
やがて明らかになる禁断の真実、そして朱里の自死の真相とは。
姉の死の真相を探るため鉢木座へ向かう伊吹
婚約を一方的に破棄し、その一ヶ月後に自らの命を絶った朱里。
小料理屋を営む二人の両親は店では普通に会話を交わしますが、家の中では一切口をききません。
伊吹と朱里は両親から愛されたという実感はなく、双子の姉と弟である互いが一番の理解者であると思っていました。
婚約もしていた朱里が何故死を選んだのか。
想像もつかなかった伊吹ですが、彼女が亡くなる一週間前に見た芝居のチケットの半券を見つけ、自分もその鉢木座の芝居を見にいきます。
女形の妖艶さ、舞台の華やかさに圧倒される伊吹。
芝居が終わると座長であり女形を演じた慈丹に朱里についてたずねますが心あたりはない、とのこと。
逆に伊吹はその姿、立ち居振る舞いから鉢木座で女形をやらないか、と慈丹からスカウトされます。
戸惑う伊吹ですが、朱里が亡くなってからぬけがらのようになっていた自分が立ち直るいい機会なのかもしれない、と考え入座。
あたたかな大家族のような鉢木座での旅暮らしに、心が満たされると同時にある不安が伊吹の心の中に広がっていきます。
そして舞台の上でその不安が形となって現れてしまうのです。
また、知ることのなかった両親の過去、そして伊吹と朱里が生まれた状況に、伊吹は愕然とするのです。
まとめ
父に疎まれた伊吹、母に嫌われた朱里。
両親からの愛を受けられない姉弟は自然と二人でいることが多くなり、互いが互いの一番の理解者であると思っていました。
その姉が自殺した理由は何なのか。
伊吹は芝居の世界に魅せられながら、決定的に自分に不足しているものを感じ、不安に怯えます。
衝撃的な事実の重みに潰れそうになった伊吹を救ったのは慈丹。
朱里と伊吹を苦しめた家族から解放し、新たな家族として包み込んでくれる鉢木座。
そんな家族に見守られながら、女形として花開いていく伊吹の姿に涙が止まらなくなる感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
大衆演劇一座の活動、ファンとのやりとりを描いた物語に興味がある
唯一の理解者である双子の姉の自死の謎を探る話を読んでみたい
遠田 潤子のファン
これは… 業という言葉では
言い切れないだろ…。
でも伊吹の未来に光が差して
いるところに希望を感じるな。
抱えて生きていくには
とても重い事実。でも芝居のライトが
その陰の部分を明るく照らしてくれる
から伊吹は歩いていけるのでは
ないかしら。
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