こちらは小説の中に紛れ込んで
しまった主人公が、物や言葉が
次々と消えていく現象に遭い
その犯人と目的を探っていくお話よ。
物や言葉が消えていく?
どういうことだ?
例えば『窓』や『戸』などが
消えると建物からそれらが
無くなってしまうのよ。当然
文章上の表現にもその単語は
出てこなくなるわ。
ええと室内外を隔てる
木やスチール製の板、とか??
なんかとんでもない世界に
なっちまいそうだな!
『イデアの再臨』五条 紀夫 (著) 新潮文庫nex
あらすじ
僕は向水学園高等学校に通うごく平凡な高校生。
ある朝、目を冷ますと部屋の壁に四角い穴が開いていた。
学校へ行けばあるべき がない。
周りの人たちは誰もこの異変に気づかない。
戸惑い混乱する僕に、金髪の同級生・安藤がこう告げた。
ここは小説の中の世界であり、自分たちはその登場人物であると。
この世界から次々と物や言葉を消し、混沌の世界を作り上げている犯人はいったい誰なのか。
僕と安藤は真相を求め動き出す。
物や言葉が何者かによって消されていく世界
朝起きると部屋の壁に穴が開いていますが、母親は気にかける様子もありません。
さらに学校に行くと入り口のところにあったものがなくなっています。
教室に向かえば、それまで手をかけて引いて開いていたものがなくなっています。
確かにあったはずなのに……と戸惑う僕。
しかし先生も生徒たちも何ら違和感を覚えることなく、ごく普通に過ごしています。
物体が消えたうえ、その名称も思い出せない。
何が起こっているのかと考え込む僕に、隣のクラスの転校生で金髪の、安藤と名乗る生徒が話しかけてきます。
彼が言うには、ここは小説の中の世界であり、どうやら僕の視点で書かれていること。
つまり僕が何か考えると「地の文」が増えていくのです。
安藤が持つ能力は最大三ページ前まで戻れるというもの。
そしてものや言葉を消している犯人は別に存在すること。
次に犯人が何かを仕掛けてくるのは人が多い場所になるだろうとアタリを付け、二人はムコシティという商業ビルに向かいます。
ビルの大型ビジョンの画面にノイズが走り、今度は逆光となった人影が映ります。
「これは消滅ではなく、昇天です……」そう語りはじめた謎の人物は、世界の言葉や物体は偽物であるため、これらを消しイデアの世界を蘇らせる、と語ります。
そして「車輪、消えろ」と言葉を発し……。
まとめ
言葉や物体が消失したうえでの様々な表現方法、そしてそれらを消す上での法則が練りに練られており、これまでの読書では使ったことのない頭の部分が刺激されます。
ページを戻したり、空白部分があったりと、紙ならではというよりは、紙の本でしかできないような仕掛けが盛りだくさんで、ページをめくる際のワクワク感が溢れます。
読書の新しい楽しみ方を教えてくれる、驚きのメタ学園ミステリーです。
<こんな人におすすめ>
紙の本ならではの仕掛けにあふれた学園ミステリーに興味がある
言葉や物が消されていく世界でその法則性を推理し犯人を探していく物語を読んでみたい
五条 紀夫のファン
なんという!空白があったり
ページを戻ったり!!
紙の本だからこそ楽しめる
仕掛けが盛りだくさんだな!!
読書という行為の可能性を
広げてくれる、かつてない
メタミステリーね。
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