『旅立ちの空 お江戸縁切り帖』
泉 ゆたか (著) 集英社文庫
こちらは江戸で縁切り状の代書を
行うお糸と依頼者たちを描く
『お江戸縁切り帖』シリーズ第五弾。
物語はついに完結するの。
ええ〜 終わっちゃうのか!?
お糸がいろいろな人たちとの縁を
結んだり、切れるのを見ていく
姿をもっと見たかったんだが。
お糸は熊蔵との縁に決着をつけようと
熊蔵のもとへ向かうのだけど、そこで
不思議な体験をするの。
二人がその関係にどう始末をつけるのかも
見ものだよなあ。それと不思議な体験てのは
お糸が縁切り依頼人に関連するものを
見ることと関係あるのかな。気になるぜ。
あらすじ
江戸で縁切り状の代書をしている「縁切り屋」のお糸は、結婚の約束をした熊蔵とかつて付き合いのあった美和との間に熊助という息子がいたことを知り衝撃を受ける。
今一度、自分の思いに目を向け、この縁にしっかりと決着をつけようと、美和と熊助の元へ向かった熊蔵に会いにいくお糸だが。
熊蔵との縁の行方とはじめて知る母のこと
熊蔵自身も知らなかった熊助の存在。
美和は身を引くと言い、熊助は父を求めて泣きます。
そんな状況の中、お糸はまた改めて自分の気持ちを見つめ直し、熊蔵ともう一度話をしよう、と決意。
ところがいざたずねてみると、熊助の猛烈な反撃に遭い、やはりこの縁は結ばれるものではなかったのだと、熊蔵への縁切り状をしたためるお糸。
いつも依頼者に関わるものを見せる生き霊がお糸に優しい光を見せ、思わず手を差しのべたところ、泊まる場所を提供してくれている三輪の婆さまが「おっかさんが来ていただろう?」と言います。
幼い頃に生き別れ、自分を捨てた母とはとっくに縁が切れていたと思っていたお糸に衝撃が走ります。
翌日、熊蔵と話し合い、別々の道を歩んでいくことを決めたお糸。
彼ら家族には幸せになってもらいたい、と思いつつ住み慣れた長屋へ帰ると、住民たちがあたたかく迎えてくれます。
しかし、兄のような藤吉が結んだ縁の不穏な気配、頼もしいお奈々一家の引越しなど様々な出来事が起こります。
そんな出来事にかかりつつ、お糸はこれまで知ることのなかった、自分の産みの母について調べはじめます。
そうしたわかった母の正体、その思いに触れお糸が選んだこれから進むべき道とは。
まとめ
まっすぐではありますが、どこか違う方向へ進んで行ってしまいそうな危うさのあったお糸。
しかし熊蔵との一件で心根がぐっと力強く、しっかりと定まったようです。
お互いのためにならないのになかなか切ることのできない縁、泣く泣く切ることしかできなかった縁。
そんな結末を迎えた縁でも、その人がその人であるために、一時でも関わることができた、かけがえのないい「つながり」であるということ。
そんな人々の出会い、つながる奇跡のありがたさを教えてくれる、シリーズ完結巻です。
<こんな人におすすめ>
人と関わる『縁』をテーマにした江戸の物語を読んでみたい
『お江戸縁切り帖』シリーズのファン
泉 ゆたかのファン
母親がお糸に寄せた想いには
思わず涙…(T ^ T)
終わってしまうのは寂しいけど
お糸や長屋のみんなが幸せに
暮らせるといいなあ。
人と人が出会い繋がる縁の
不思議さと有難さに
心がじんわりと温かくなる
物語ね。
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