『厭世フレーバー』 三羽 省吾 (著) 文春文庫
こちらは父親が失踪した
ある一家の様子を描いた
物語よ。
ええ〜 父親が失踪しちゃったのか。
残された家族はどんな様子なんだ?
母親は酒浸り、高校生の姉は
夜遅くまで遊び歩き、兄は
口うるさくなり、お爺さんの
ボケが加速。末っ子の中学生は
高校へ行かずに働くことを
決意するの。
うわお これは家族崩壊の
一歩手前といっていいいほどの
危機的状況なのでは…?
あらすじ
リストラされ家でゴロゴロしいていた父親が失踪した。
母は酒浸りとなり、高校生の姉は夜遅くまで遊び歩き、兄はやたらと口うるさくなり、爺さんのボケは加速。
中学生の末っ子は部活をやめ、高校へ行かず働くことを決意する。
家族それぞれが父親の失踪に動揺し、傷つきそれぞれ別の方向を見ながら消化できぬものを胸に抱え込んでいる。
そんな家族に隠された秘密とは。
父親の失踪、残されたバラバラの家族
父親の失踪から陸上部でも思うように成績が伸びず、家に帰れば酒を飲んでいる母。
誰かが買った惣菜をレンチンして食べる日々を送る中2の須藤圭一は、三者面談で「高校には行かずに働く」と宣言、慌てる担任と母親を置いて陸上部の部室へ向かい、顧問へ退部の意向を伝えます。
そこへ圭一のライバル、段田孝一ことダンチが通りかかります。
話を聞いたダンチは「いいんじゃないすか」と一言。
圭一の練習態度が良くなくて後輩にも示しがつかない、と。
思わず殴りかかった圭一を顧問が間に入り、ひとまず退部の件は保留に。
家に帰れば27歳の兄、リュウがやたらと話しかけてくる。
父親代わりのつもりか、と正直ウザい。
数日後、早朝のアルバイトで新聞配達をはじめた圭一。
部活に行かなくても力をつけることはできるだろうとと考え、トレーニングに見立て走って配達。
届け先にはほとんど学校に来ることのない女子生徒、榎田の家もありました。
しかし榎田にまつわるある噂を聞き…。
リュウは毎月実家にお金を入れているが、現在求職中であること、日雇い労働で金を稼いていることを家族の誰にも話すことができずにいます。
母は浴びるように酒を飲むようになり、妹は夜遊び癖がつき毎晩帰宅が遅い。
弟は熱心だった陸上をやめ、爺さんはボケが進行したのか食べてばかりいる。
そんな状態だから、日に日に肌が焼けていく自分のことを誰一人気にかける様子はない。
日雇いで疲れ、思うように求職活動は進まない。
「何やってんだろ、俺」。
いつの間にか口癖になった言葉をつぶやくリュウに、現場の外国人、サブローが愛想よく話しかけてきて…。
まとめ
父が失踪したことで、妻、長男、長女、次男、祖父それぞれが自分の人生って何なんだろう?という目線で自分に向き合っていきます。
それまでもあった問題が父親の失踪で表に出てきたところもあるようです。
それぞれが第三者からの手や言葉で自分なりに問題に立ち向かい、ひとつ成長して新たに家族を構築していく。
一人一人がいろんな時代を経て、経験を積み重ね生きている。
その集合体が家族なのだということを改めて強く感じる感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
会社をリストラされた父親が失踪した家族それぞれの視点で描かれる物語を読んでみたい
誰もが自分勝手に過ごし崩壊寸前に見えた家族が再びつながっていく物語に興味がある
三羽 省吾のファン
いろんなものが積み重なっての
人生であり家族なんだなあ。
中でも爺さんの人生には
圧倒されるぜ…。
家族それぞれに人生がある。
そんな当たり前のことを
感じられることができたら
何度でも家族という形を
築いていけるものなのかもしれないわね。
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