『笑うマトリョーシカ』早見 和真 (著) 文春文庫
こちらはある政治家が
誰かの操り人形だった
としたら、という物語よ。
一人の記者がその疑いを持ち
政治家の過去や周辺を
調べ始めるの。
操り人形ってことは誰かの考えた
シナリオを演じる、ってことだよな。
一度や二度ならともかく
何年もそんなことできるものなのか?
記者が調べていくにつれ
関係者の不審死や、彼の家族と
秘書との怪しげな関係が
浮かんでくるの。
ええ〜?誰かに踊らされて
いるだけならその政治家って
かえって気の毒なのでは…。
そいつの本性はどこにあるのか。
あらすじ
人を惹きつける魅力に溢れ、47歳という若さで官房長官の座にのぼりつめた清家一郎。
彼がもし誰かの操り人形だったとしたら?
そんな疑念を抱いた女性記者・道上香苗。
彼の生い立ちや周囲の人間、背景などを調べていくうちに、関係者の不審死、同級生の秘書や家族たちとの怪しげな関係が浮かび上がってくる。
清家一郎を操る人物とはいったい誰なのか。
清家一郎という政治家を裏で指揮する人物とは
愛媛県松山市にある私立高校、福音学園高校で知り合った清家一郎と鈴木俊哉。
人一倍幼く、母親と仲の良い清家と、細かなことにこだわらない男、佐々木光一と3人で過ごすことが多くなります。
ある日、清家は自分の父親は現役の国会議員であることを俊哉と光一に打ち明けます。
母が銀座でホステスをしていた頃に出会い、恋に落ちたのだとか。
父のようになりたい。
そんな思いから清家は政治家になりたいのだと言います。
一方、俊哉は複雑な思いを抱きます。
自身も政治家になりたいと考えていましたが、父親が逮捕されたことでその思いは絶たれたのです。
すると光一が「そしたらお前が清家のブレーンになればいいんや」と言い放った言葉が俊哉の耳に沁み込みます。
3人は『清家一郎を政治家にする会』を結成。
光一の実家の小料理屋によく訪れるという政治家たちから名刺をもらい、彼らから様々な話を聞きます。
緻密な作戦を練り、人気ある対立候補者をおさえて清家は見事生徒会長に当選。
これからも清家を支え続けようと決意した俊哉は、彼の母親と不適切な関係に陥りながらも清家を徹底的にプロデュース。
清家も優秀にそのリクエストをこなし、政治家としての地位と実績をあげていきます。
そんな彼に違和感を抱いたのは新聞記者の道上香苗。
AIと喋っているような気味の悪さを感じたこと、そして清家の学生時代に書いた論文がヒトラーのブレーンとされていたハヌッセンを扱い、しかもそれを批判していたため。
彼は何者かの指示通りに動く、中身のないがらんどうなのではないかと考えた香苗は清家の周辺や関係者、過去を調べはじめます。
まとめ
官房長官にまでなるような優秀な政治家が、実は誰かの操り人形だったとしたら。
バックについている人物が優れていれば、政治家に必要なのは演技力「だけ」でも成り立ってしまうものなのかもしれません。
いくつもの仮面をかぶり続けた清家の「本当の顔」。
それはもはや誰も知ることができず、気がつけば誰の手にも負えないような存在となっている。
「演技している」という演技が含んだその思惑に背筋が冷たくなる物語です。
<こんな人におすすめ>
人気政治家が誰かの操り人形である可能性を描いたミステリに興味がある
大物政治家がどのように現在の地位に至ったのかを描いた物語を読んでみたい
早見 和真のファン
ひええええ かぶった仮面が
多すぎてどんな人間なのかが
もはやよくわからなくなってる!
しかも怖い方向で!!
演技を重ねることで本当に
なることもあるのかも。
一番怖いのは彼の本心を
誰も理解していないという
ことなのかもしれないわ。
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