こちらは母親からの小包を
テーマに箱に詰められた
様々な「思い」を描く物語よ。
ほほう。母親からの小包って
実家で取れた野菜とか米、
隙間にタオルとか靴下とか
詰めてあるイメージだな。
ある女性は同棲中の彼氏に
農家から購入した野菜を
「母から届いた小包」と
嘘をついてしまうの。
ええ?なんでそんな嘘を?
なんか事情があるんだろうか。
『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』
原田 ひ香 (著) 中公文庫
あらすじ
実家の母親から送られてくるのはお米に野菜、隙間に詰めるのはタオルや靴下や肌着など。
時代は移り変わっても母からの小包の中身はなぜかあまり変わらない。
野菜を売る農家から買った荷物を「実家から」と嘘をつく女性、父が毎年受け取っていた小包の理由、そして母から届いた最期の荷物。
箱に詰められた様々な「思い」を家族に届ける物語。
小包と家族の関係
石井愛華は恋人の野々村幸多と同棲中。
東京で生まれ育ち、一流企業の役員をしている父親と専業主婦の母という両親を持ち、性格も良くモテそうな彼がどうして自分と交際しているのか。
大学は奨学金とバイトで通い、夜の店で働いたこともある愛華は、彼と結婚することはあまりにも釣り合わなくてあり得ない、と考えています。
それでも彼に提案され同棲を始めると、愛華はひとつの嘘をつきます。
定期的に購入している群馬の農家からの野菜が入った荷物を幸多に「実家から届いた」と言ってしまうのです。
結婚の話は慎重に避けてはいたものの、幸多から「両親に会ってほしい」と言われ焦る愛華。
注文時にLINEで時候の挨拶やかんたんなやりとりを農家としていた愛華は、農家の人に自分の親のふりをしてほしい、と頼むのですが…。
また、内藤拓也は父・慎也の四十九日を終え広島の実家を見回し、この家をどうするべきかと考えます。
アドレス帳をめくると北海道羅臼の住所で槙恵子という女性の名が。
そういえば毎年昆布が送られてきた、と思いつつこの女性に父のことを知らせるべきかと電話をしてみたものの、呼び出し音が鳴るばかり。
ご近所の方の紹介で実家をある一家に貸すことになった拓也はいくらか収入が増えたため、そのお金で恋人の奈瑞菜とともに羅臼の住所を直接たずねてみることに。
まとめ
食べきれないほど送られてくる米や野菜、保存食。
間に挟まる靴下やタオル、ヒートテック。
実家から送られてくる荷物には、家族を思う気持ちがぎゅうぎゅうに詰まっています。
実の親とそうした関係を持てなかった愛華も農家からの思いはしっかりと受け取ったようです。
衝突したり、すれ違ったりする家族の思いをつなぎ、人と人を結んでいく。
小包にはそんな役割があるのかもしれない、と思うあたたかな物語です。
<こんな人におすすめ>
小包をテーマに家族の思いを描いた物語に興味がある
家族の意外な部分や変わらないものにハッとさせられるような話を読んでみたい
原田 ひ香のファン
いいねえ〜。小包の中には
相手に対する思いが
ぎっちりと詰まって
いるんだよなあ。
自分の家族に思いを
馳せてしまう
あたたかな物語ね。
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