こちらは前作『猫目荘のまかないごはん』
に続く第二弾よ。一度夢が叶った
漫画家の仕事を諦めようとする女性が
登場するの。
へえ〜。夢が叶ったのに?
諦めちゃうのか。
売れなかったってことか。
担当編集者とあれこれ打ち合わせを
重ねながらいろんな方向で作品を
出してきたけれど売れなかったの。
漫画家の道を諦めることにして
猫目荘にやってきたのよ。
ほほう。ここの住民たちは
個性豊かだからなあ。
いろんな刺激を受けそうだ。
『猫目荘のまかないごはん 夢とふっくら玉子焼き』
伽古屋 圭市 (著)角川文庫
あらすじ
桜が満開となる季節に、まかないを出す下宿屋「猫目荘」へ入居することになった結芽。
念願叶って漫画家デビューをしたものの、ヒット作品を作り出せないまま数年が経過し、ついに筆を折ることを決意する。
猫目荘の美味しいまかないを食べ、看板猫のボタンと触れ合い、個性豊かな生き方をしている住民たちや大家と交流するうちに結芽の内面と周囲に少しずつ変化が現れる。
一度叶った夢を再び諦めることに
大卒で就職し、働きながら高校時代に一度封印したマンガ家への道を再び目指し始めた結芽。
描くことが楽しく、一年二年と続けるうちにクオリティが上がっていくことを感じていた頃、ウェブ媒体の漫画レーベルにオンライン持ち込みし、担当がつくことに。
担当とブラッシュアップを重ね、作品が掲載されたタイミングで勤めていた会社を辞め、マンガ家一本でやっていく道を選びます。
ところが担当に勧められるまま書き進めた二本目、三本目の連載は泣かず飛ばず。
一方、結芽に憧れてマンガ家になった後輩はヒット作品を連載中で飛ぶ鳥を落とすほどの勢いです。
そんな後輩にマンガ家をやめようと思う、と伝えるも納得のいかない様子。
ふとしたきっかけで家賃が安くまかないの出る猫目荘の存在を知り、ここに住みながら何か他の仕事を探すことに。
大家の降矢は朝食担当ですが、加熱しすぎたり、買い物を間違えたりと少々おっちょこちょいな一面が。
他にも俳優や登山系の人気ユーチューバー、放浪の旅から戻ってきた女性など猫目荘は個性豊かな人物ばかり。
さらに住民の友人の娘だという十二歳の美少女が一ヶ月間生活をともにすることに。
年代も育ってきた環境も生き方も異なる人々の暮らしは、結芽自身の考え方を揺さぶり、やがて新しい風を呼び込んできます。
まとめ
叶えた夢の挫折に、結芽はその理由を分析し自分を納得させようとします。
ところが彼女自身が認めていないその才能を周囲の人が教えてくれたり、日常とは異なるシチュエーションでの会話や行動から、その「気づき」へとつながっていくのです。
周囲からのネガティブな評価は表から見えるほんの一部分についてなのかもしれません。
自分だけが届けられるものを理解し、楽しく描き続けられることが、結芽のマンガ家としての才能と言えるのでは。
美味しい料理と縛られない生き方をする住民のいる猫目荘は、人生の「気づき」へのヒントが詰まったパワースポットなのかもしれません。
<こんな人におすすめ>
夢を諦めた、または諦めかけた経験がある
前作『猫目荘のまかないごはん』を読んだ
伽古屋 圭市のファン
漫画を描くことが何よりも
楽しいってことを
周りの人たちから教えられて
改めて気付かされたんだな。
環境を変えるって大事かも。
枠に囚われない生き方をしている
住民たちとの交流があるからこそ
考え方も自由になれたのかも
しれないわね。
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