こちらは四国の遍路に出た父親が
帰りの船から落ちて亡くなったの。
事故死か自殺か不明なのだけれど
娘が四国へ行き、父親の足跡を辿るお話よ。
遍路の後に…。何か悩みでも
あったのかな?なければ事故って
ことになるんだろうが。
父親が歩んできた人生を
父親の回想、という形で振り返るわ。
浮気をして夫婦関係の危機に陥ったことも
あるし、自分自身の父親の介護と看取りをした後
震災ボランティアを経験。
そのあとに遍路に向かったのよ。
なるほど。多くの生や死を
見てきたようだな。遍路に行った時には
何を考えていたんだろうな。
『冬の光』篠田 節子 (著)文春文庫
あらすじ
一人で四国遍路に出かけ、その旅を終えた帰路、父は冬の海で遺体となって発見された。
高度成長期を企業戦士として駆け抜け、専業主婦の妻に家庭を守ってもらい、二人の娘と孫にも恵まれ、幸せな家庭を築いていたはずの父の死は、事故死だったのか、あるいは自殺だったのか。
次女の碧は、四国に向かい父の足跡を辿っていく。
海に消えた父の足跡を辿る
四国遍路からの帰りのフェリーから転落、溺死した父。
母は「人をさんざん裏切るから最後は海に飛び込むはめになって」と父への恨み憎しみをあらわにします。
父はかつて数年間続いた浮気相手がおり、母の親も間に入って別れ、夫婦はもとのさやにおさまったのですが、最近またその女性とのやりとりがメールでされていたのを長女が発見。
母とともに父を問い詰め、その場で相手の女性に「二度と連絡を取らない」と留守番電話にメッセージを入れます。
その後の父は、自分の親の介護と看取り、震災ボランティアを経て、四国遍路へ。
父が心を寄せていた女性との日々、妻と家族の存在、そして四国遍路で父が体験し、思った事とは。
まとめ
学問の世界で孤高に生きる恋人。
上へとのぼりつめることを生きがいとした会社員時代。
父の介護と震災地でのボランティア。
父の中では様々な思いが絡まり、葛藤していますが、家族を守る妻との溝はあまりに深く、互いに埋まることのない孤独に包まれていたのかもしれません。
愛と孤独、そして心を満たすものとは何かを考えさせられる物語です。
<こんな人におすすめ>
団塊の世代の生き方や価値観を描いた物語に興味がある
人との繋がり、関係性のもろさを描いた話を読んでみたい
篠田 節子のファン
どこまでも理解しあえないけれど
一緒にいるというのは虚しくもあり
苦しくもあるものだな。
そんな彼が目にした光は
心のあり方や方向性を占示す
大切な輝きだったのかもしれないわね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。