こちらは、様々な悩みや苦しみを
抱えながら生きていく人々の姿を
描いた6つの物語よ。
ほほう。例えばどんな?
離婚して一人で生きている女性が
ふと死にたくなる瞬間や、尊敬していた
上司の猥せつ動画がネット上で流れたり。
おお… ハードだなあ。
彼らはどんな人生を送ってきて
どんな風に感じながら日々を
生きているんだろう?
『どうしても生きてる』 朝井リョウ (著) 幻冬舎文庫
あらすじ
結婚して三年で離婚した私は、前の夫との間に子供はおらず、一人暮らし。
仕事もしているし、彼氏もいる。
つつがなく送る日常の中で、事故や事件のニュースを目にすると、私はスマホを手に取る(「健やかな論理」)。
前の職場で世話になった、尊敬する上司のSM動画がネット上に流出。
痛みとは何か、そして痛みを欲する理由とは(「そんなの痛いに決まってる」)等、言葉で言い表せないような苦しみを抱えて生きる人々の姿を描く6編の物語。
それぞれが抱える胸の奥のしこり
年下の彼氏とテレビを見ながら、なにもかもぶっ壊れればいいのにな、と思う。
事故や事件のニュースを目にすると、私は被害者のSNSを特定する。
そこには、この先決して更新されることのない彼らの一部が存在している。
仕事をしているとき、ホームで電車を待つとき、消えたい自分と少しだけ生きていたい自分がいる(「健やかな論理」)。
前の職場の同僚から、尊敬していた元上司が退職した、と聞かされた。
女王様に調教されている動画が流出したのだ。
今の職場では、出ない結果を求め続けられている。
元上司はそんな状況でも「大丈夫」と言い続ける人だった(「そんなの痛いに決まってる」)。
まとめ
見ないようにしていた痛みや苦しさが、心の隅に埃のように降り積もっていき、こびりついてはがれない状態の人々を描きます。
そんなギリギリのところにいる彼らには、細くてもすがることのできる糸があります。
その糸は誰もが持っているものであり、やがて幸せへとつながっていく。
そう信じたくなる6つの物語です。
苦しみや痛みは生きているという
実感とも言えるな。
追い詰められているときに
自分の足を踏みとどまらせるのは
日常の中の、ほんのささいなもの
なのかもしれないわね。
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