こちらは推理作家・江戸川乱歩と
詩人の萩原朔太郎がコンビを組んで
死体が消えた謎を解く、という作品を
巡って起こる二人の作家を描く物語よ。
名作家がコンビを組んだ
ミステリーか。おもしろそうだな。
どんな作家が書いた作品なんだ?
無名の新人作家よ。でも
この作品を目にした、現在は作品を
出していないベテラン作家が新人作家に
ある交渉を持ちかけるの。
ベテラン作家が新人作家にねえ…
なんだかきな臭いぞ。
『死体を買う男 』歌野晶午 (著)講談社文庫
あらすじ
理智の追求を棚上げし、金のために通俗小説ばかり書いていた乱歩は、自分に絶望し、休筆することに。
休筆しても頭の中に何も浮かばず、才能の限界を感じた彼は、自殺を考え紀州白浜の三段壁へやってきた。
いざ海へ飛び込もうとする彼を助けたのは高貴な顔をした若く美しい青年。
同じ宿に泊まっていると知り、お礼に行こうとする乱歩の目にうつったのは、顔をまっ白に塗り、女ものの着物を着て窓辺に佇む青年の姿…。
そして夜中、青年は首を吊って死んでいるところを発見されますが、警官が現場へ向かうと死体はこつぜんと消えていた。
そして青年がいた部屋に行ってみると、そこには死んだはずの青年が。
乱歩と朔太郎が事件の謎に挑む。
首吊り死体が消えた謎
この話を知った友人の萩原朔太郎は、われわれの手で事件の真相を探ろう、と乱歩に持ちかけます。
死んだ青年・塚本直と双子の弟・均を知る関係者に話を聞いてまわる乱歩と朔太郎。
積極的に質問を重ね、推理を披露していく朔太郎に対し、ある違和感をじっと考え込む乱歩。
二人は事件の真相に辿りつけるのでしょうか。
まとめ
一人の老いた作家のもとに持ち込まれた無名の新人の作品、という入れ子構造で物語は進んでいきます。
昭和7年頃の時代背景、好奇心旺盛な朔太郎と、本物の事件は苦手だという乱歩のやりとりも興味深く、知らぬうちに物語の世界へと引き込まれていきます。
現代の作家とこの作家たちが取り組んだ謎が巧妙に絡み合い、驚愕のラストへと導きます。
謎解きの楽しみを味わえる推理小説です。
<こんな人におすすめ>
江戸川乱歩と萩原朔太郎が事件の謎に挑む推理小説に興味がある
物語の中に物語が作られる、何重ものカラクリが隠された物語を読んでみたい
歌野晶午のファン
ベースの物語と、作中内の物語
二つのミステリーが楽しめる!
乱歩と朔太郎の人物像も面白い!
二つの物語を絡ませる見事な構成と
驚愕のラスト。重厚で読み応えのある
骨太なミステリーね。
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