父と共になくなった自転車が
二十年ぶりに戻ってきたという作家が
その自転車の足取りを辿っていくお話よ。
なんと!!二十年ぶりに!?
そんなことってあるんだなあ。
戦前、戦中、戦後の台湾や
戦場となったマレー半島などが
舞台になっているわ。
自転車が戦場に!?
自転車はいったいどんな景色を
見てきたんだろう。
『自転車泥棒』呉 明益 (著), 天野 健太郎 (訳) 文春文庫
あらすじ
針と糸を手にして背広づくりをしていた無口な父は自転車とともに失踪した。
その自転車が、二十年もの年月を経て僕の目の前に戻ってきた。
小説家でもあり、古い自転車のコレクターでもあるぼくは、この自転車の来し方に興味を持ち調べていく。
やがて物語は国や時を超えて広がっていく。
二十年前に消えた自転車とふたたび出会う
古道具屋をしている友人から紹介された一台の古い自転車。
それは作家であるぼくの父とともに二十年前に消えた幸福印の自転車でした。
前の持ち主から自転車にまつわる話を聞こうとメールを送ったぼくに返ってきたのは、チョウの翅を一枚一枚貼り付けて絵をつくる女工員の話でした。
また前の持ち主の元恋人・アッバスとも仲良くなり、彼の父親が遺した、一本のカセットテープを翻訳することに。
それはマレー半島を自転車で駆ける「銀輪部隊」の活動記録でした。
さらに以前の持ち主が語ってくれたのはゾウたちの話。
ビルマから台湾にわたったゾウの記憶とは。
まとめ
戦前、戦中、戦後の台湾や戦場となったマレー半島などを舞台に自転車の辿った道をリアルに、時に幻想的に描きます。
重い鉄の馬と呼ばれた自転車が、戦時中、兵士の足として使われていたことにも驚きます。
また商品として蝶を売るために乱獲した時代があったり、盗品ばかりを売る市場があったりと、台湾の「生きていく」という強いエネルギーも感じます。
鉄の塊である自転車は多くの自然と、人々と生き物の生きる様、そして死んでいく姿をじっと眺めていたのです。
読後、長い間旅をしてきたような深い感慨を受ける物語。
<こんな人におすすめ>
20年前に父と共に消えた自転車が歩んだ道を描く物語を読んでみたい
戦前から戦後までの台湾やマレーシアを舞台に懸命に生きた者たちを描いた話に興味がある
台湾のアンティークな自転車について描かれた小説を読んでみたい
すごい… 完全に物語の世界に
入り込んでしまった……( ゚д゚)
自転車と一緒に俺も旅してた。
生と死を見つめてきた自転車の
ドラマティックな来し方を描く
物語ね。
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