こちらは小さなアーケードに
ある店の店主やお客たちとの
交流を描く物語よ。
ほほう。小さなアーケードか。
どんな店が集まっているんだ?
使い古しのレースや義眼、
使用済み位の絵葉書にドアノブなど
それぞれ専門に取り扱うお店なの。
めっちゃ需要が低そうな
ラインナップ…。そこの店主たちも
気になるけど、どんなお客が来るのかも
興味深いな。
『最果てアーケード』 小川洋子 (著) 講談社文庫
あらすじ
狭い通路のほんの数十メートル先は行き止まり。
その通路沿いに数件の店が並ぶ、世界で一番小さなアーケード。
それぞれの店が取り扱うのは使い古しのレース、義眼、使用済みの絵葉書、ドアノブ、勲章など、一体誰が何のために買うのか?と思うような品たち。
店を必要とする客がやってくるのをひっそりと待ち続けている。
小さな古びたアーケードに訪れる客たち
アーケードの大家である私は、ここで生まれ育ち、それぞれの店の配達係をしています。
昔は舞台衣装を作り、今は着る者のない衣装を作り続ける常連のおばあさん、「衣装係」さんには使い古しのレースを扱う店のレースを。
レターセットひと組、ドアノブ一個でもていねいに梱包し、慎重にお客様へと届けます。
狭い店内に雑然と、しかし一つ一つ吟味された品の数々が並んだ様子、店に訪れた印象的な客など、父が生きていた少女の頃の思い出も交えながら描かれます。
まとめ
アーケードの天井のステンドグラスから差し込む光。
アーケードの奥にある読書休憩室で同級生の少女と過ごした時間、ドアノブ屋さんの、ひっそりとした心落ち着く窪み。
小さな商店街は淡い光と影に包まれた、ひっそりと客を待ち続ける場所でもあります。
おとぎの国に迷い込んだようなうっとり気分に浸っていると、思いがけず厳しい現実を突きつけられ、そのギャップからいっそう物語の世界の中に引き込まれていきます。
小さなアーケードには、自分のためだけだと思える場所が、モノがある。
そんな風に感じられる古びた宝石箱のような、大切にしたい物語です。
<こんな人におすすめ>
変わった品物を売る店ばかりが集まるアーケードの話に興味がある
品物と人とのつながりから、その人の生き方が垣間見える話を読んでみたい
小川洋子のファン
美しくてどこかもの悲しい…
小川洋子さんの世界観が
存分に堪能できるな。
たまにそっと取り出して
手に取ってみたくなる
古い宝石箱のような物語ね。
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