こちらは植物園に勤める男性が、歯の治療から
不思議な出来事に遭遇し、植物園の木のうろへ
落ちた後、さらに奇妙な体験するお話よ。
不思議だらけじゃんか。
歯の痛みと木の穴は何か
関係があるのか?
そうね。治療を受けた歯の
穴の部分から子供の頃のことを
思い出して行くの。木の穴に落ちた後は
そんな子供の頃の風景があったり
ある少年と出会ったりもするわ。
ふうん?過去の記憶と痛みか。
その不思議な体験はどんな風に
つながっていくのだろう。
『f植物園の巣穴 』梨木 香歩 (著) 朝日文庫
あらすじ
f植物園の園丁をしている私は、歯の痛みに耐えかねて歯医者へとやってきた。
診察を受け、薬を受け取るために待っていると、窓の奥には犬が忙しく働いていた。
歯医者の家内は前世が犬だったのだと言う。
職場であるf植物園にある大きな木のうろに落ちた私は、気がつくと住まいに戻っていたが、落ちてからの記憶がない。
失くした履き物、妻との思い出、子供の頃の記憶と歯の痛みが私を穴の底の世界へと誘う。
不思議な存在たちと大きな木の穴
忙しくなると前世の頃、つまり犬の姿に戻ってしまうという歯医者の家内、大木のうろが御神体であると教えてくれた、ナマズに似ている神主など、不思議な世界をどこかユーモラスにサラリと描き読者を引き込みます。
歯の痛みと木の穴は大きな喪失を示唆しており、後半部分でその失ったものの正体が少しずつ明らかになっていきます。
まとめ
子供の頃、私の世話をしてくれていた千代、そして亡くなった妻の千代、近所の食堂の女給の千代さん。
それぞれと関わった記憶が少しずつ思い出されていきます。
叔母に聞かせてもらったアイルランドの治水神と、子供の頃に過ごした家のそばに流れていた川と、宝ものを隠しておいた木のうろ。
豊かな自然の情景と、懐かしく苦しさをも感じる昔の出来事と、私に関わる不思議な存在。
現実と離れた穴の底で出会うのは、私とともに探しものをしてくれる、名もなき子供です。
彼と行動しながら生命のつながりや尊さを感じていきます。
穴というものは、命が通る場所であり、そこに澱むものは流すべきなのだということを感じさせる、不思議でどこか郷愁を感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
歯の痛みと木のうろがリンクして迷い込む不思議な世界を描いた物語に興味がある
人と動物が語り合い、植物が茂る、命のつながりを感じさせる話を読んでみたい
梨木 香歩 のファン
なるほど!穴ってそういう
ことだったのか。
そしてこのラストは泣ける…。゚(゚இωஇ゚)゚。
豊かな自然の世界と、様々な
命のつながりや流れを感じる
深い余韻が残る物語ね。
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