こちらは日本人の女子大学生が
留学先で起こる出来事を描いているお話よ。
様々な人種や性別の学生たちが集まる食堂で、
差別や偏見に気づき考え、成長していく物語よ。
留学かあ。言葉がうまく
話せないうちはいろいろと
大変なことも多いんだろうな。
主人公の尚美は勉強は頑張って
いるけれど、会話はまだうまくは
できいないの。ルームメイトは
華やかな美人で、自分のことを
バカにしているのでは、と思っているの。
そうかあ。苦しい環境だなあ。
理解し合える友人に巡りあえると
いいんだが。その食堂に集まる人たちからも
何か得るものがあるのかな。
『サード・キッチン』白尾 悠 (著) 河出文庫
あらすじ
ある人物の援助を受け、アメリカの大学に留学することができた尚美。
勉強は頑張って好成績をおさめていますが、会話がうまくいかず、ほぼひとりぼっちで過ごしています。
ある日、人種や性別などあらゆるマイノリティが集う特別な食堂「サード・キッチン」に招かれます。
学生たちが自らの手で作る多国籍料理に心を満たされますが、同時に尚美自身が差別や偏見の目を持っていたことに気づきます。
傷つき、傷つけ合いながら仲間を信じ、支えつつ前を向いて進んでいく若者たちの姿を描く、感動の青春物語。
キッチンから見える多様な世界
父を亡くし、母と二人暮らしだった尚美は、都立高三年のとき母に内緒で留学を希望する生徒を対象とした奨学金の試験を受けますが不合格に。
あきらめようとしたその時、ある老婦人が費用を援助したい、と申し出てくれました。
ありがたくその手を借り、アメリカの大学へ留学した尚美。
ルームメイトはスタイルの良い美人のクレア。
彼女はうまく言葉が出てこない尚美を見下しているような部分も。
ひとりで活動する尚美はひょんなことから隣の部屋のアンドレアと意気投合し、多様な人種と性別の学生が集う「サード・キッチン」へいっしょに参加します。
彼らの手作りの料理を食べ、人種や性別への偏見や差別についてのディイスカッションを聞くうちに、尚美自身の中にも存在するものだと気付きます。
まとめ
周囲の偏見や差別に傷つけられていると思っていた自分が、誰かを傷つけていることもある。
そんな風に気づけたのは、彼らが心をこめて作った祖国の料理が硬く閉ざした心の扉を開いてくれたからかもしれません。
何層にも絡まりどこまでも広がる偏見や差別は、まずその事実を知り、背景を学び、考え続けることが大切なのだということを感じさせてくれる、感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
留学生活のリアルを描いた物語に興味がある
ジェンダーや国籍など多様な人物が集まる場での人々の価値観やアイデンティティを描く作品を読んでみたい
白尾 悠のファン
差別をしている人間も
またある別の人間から差別されて
いることもある。日本にいるとなかなか
気づかないことだよな。気づき、考える
尚美はえらいな。
偏見や差別は身近に、あらゆるところに
存在しているもの。理解不能と投げ出すのではなく
学び、考え続けていくことが大切なのよね。
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