こちらはホラーや幻想小説など
様々なジャンルを、多彩な文体で
描く15編を収めた短編集よ。
へえ〜。何やらおどろおどろしい
雰囲気だな。例えばどんな話?
街中で車に轢かれた少女が
亡くなってしまうのだけど
運転手の男と近くにたまたまいた
男が二人で少女を解体していくの。
(;゚Д゚)(゚Д゚;(゚Д゚;)ナ、ナンダッテー!!
ななな どゆこと…!?
『綺譚集』津原泰水 (著)創元推理文庫
あらすじ
散策の途中で出会った少女がバラバラにされていく「天使解体」、姉とともに祖父の殺害を図る「サイレン」、美しいものを描きその生命を絵の中に閉じ込める画家の末路を描く「赤假面傳」。
ホラーや幻想小説が多様な文体で描かれる、グロテスクで鮮やかな十五の物語を収めた短編集。
幻想的な世界を多彩な文体で描く
散歩の途中で出会った美しい少女。
自転車に乗って去っていったのですが車にはねられてしまいます。
慌てておりてきた運転手はうろたえ、私に「とにかくここから運ぼう」と言います。
静かなところに、人間らしく、天使らしく…と会話を交わしながら少女の屍体を車へと運び…(「天使解体」)。
少々頭と体のゆるい姉が、厄介払いとばかりに祖父の家で暮らすことに。
その祖父の家をたずねていった弟は、姉から祖父殺しを計画していること、そしてそれに協力するように言われます。
実行の時は思いの外早くにやってきて…(「サイレン」)。
洋画家・村山は美しいものを生命ごと絵に閉じ込める才能を持っています。
学生時代、心を寄せた美少年・稲生からひどい言葉を連ねた手紙をもらった村山は彼をキャンバスへ。
噂で彼が亡くなったことを耳にします。
時が経ち、画家として著名になった村山のもとへ一人の男性がやってきます。
稲生の知り合いが何か言いに来たかと考え、彼の墓へと向かった村山が目にしたものとは(「赤假面傳」)。
まとめ
ホラー、ミステリー、幻想。
ジャンルにおさまりきれない、怖ろしくも美しい狂気の世界を、多様な文体で描いていきます。
何気ない日常から次第に不穏な状況に向かっていく、おかしな言葉のやりとりは、背筋がゾワゾワしながらも、感覚がずれた秩序のようなものも感じられます。
人間という輪郭が溶け出して曖昧になり、他の何かと融合していくような不思議な感覚になるものも。
十五の異なる世界を多彩な文体で描き出す、読み応えのある奇譚集です。
<こんな人におすすめ>
様々な時代背景、文体で描かれた幻想小説を集めた短編集に興味がある
現実と幻想が交錯する、美しく狂気じみた世界を描いた物語を読んでみたい
津原泰水のファン
怖いのだけどもなぜか一貫性が
あるような…。明治っぽい文体
なんかは重厚で妖しい雰囲気を
いっそう引き立てているようだな。
まさに『幻想小説』の名にふさわしい
現実と非現実の境界が曖昧となるような
そして耽美な世界観に浸れる短編集ね。
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