こちらは応仁の乱から
百年にわたって続いた
戦乱の世を描く物語よ。
百年!?そんなに長い間
戦い続けたのか?
それだけ時間が経つと
世の中の様子も変わっていそうだが。
様々な武将たちが登場するのだけど
戦う理由はまたそれぞれにあるの。
戦い方は彼らの生き方にも
関係するのね。
なるほどね。彼らがどんな
価値観を持って、何を求めて
戦い続けたのか。気になるぜ!
『乱都』天野 純希 (著) 文春文庫
あらすじ
「都には、魔物が住んでおりまする」僧房の寝所へとやってきた男は続けてこうささやく。
「都に巣食う魔物と戦うお覚悟があるならば、ここからお救い申し上げまする」と。
私の心はすでに決まっていた…。
応仁の乱を引き起こした畠山義就から室町幕府最後の将軍となった足利義昭まで、実に百年にわたって続いた戦乱の世を描く。
京の都に魅入られ執着する者、権威にこだわる者。
情報と運と力を駆使して戦乱の世を駆け抜けた七人の男の物語。
それぞれの思いを胸に戦場へ挑む男たち
遊女腹と蔑まれてきた畠山義就。
元服した義就の相続に反対する臣下たちによる襲撃を逃れ潜伏した後、兵を引き連れ上洛すると将軍は義就を畠山当主として認めます。
そして反対派の城を次々と落としていきます。
反対派が新たに擁立した政長は戦略に長けた人物で、幕府にも働きかけを強め義就追討を認められます。
二年半に及ぶ戦いに敗れた義就ですが再起の機会を伺い、そして天下人になることを決意するのです(「黎明の王」)。
室町幕府十五代将軍、足利義昭は目の前の男をじっと見据えました。
男の名は織田信長。
線が細く癇の強そうなこの男の能力は今ひとつはかりかねるが、京の都を守るにはこの男の力が必要となる。
兄義輝を討つことに協力させ、政府のお墨付きを信長に与える。
信長の様子を見るに、この男に自ら天下人として意志は無い。
そう判断した義昭ですが(「無限の都」)。
まとめ
出自によって判断されることもあれば、ただ力だけが求められることもある。
数多くの兵だけでは勝てない戦や予想外の裏切り、またそれを誘発させる情報戦。
多様な戦略で日々を生き抜く男たちが「生き甲斐」とするものは、これもまた様々です。
将軍の座を手中におさめたい者、都に興味はなく民が平和に暮らせる自国を作りたい者、人を斬ることで生きる喜びを実感する者。
長くない生涯の間に敵味方が代わり、明日の自分の命さえ定かでない日々を過ごす彼らの生き様とは、とても濃密なもの。
そんな彼らが何を見、どんな思いで立ち続けてきたかを描く連作短編集です。
<こんな人におすすめ>
応仁の乱から室町幕府の終焉まで、争いに明け暮れた男たちの生き様を描いた話に興味がある
戦国時代の戦い方、それぞれの武将の思惑を描いた時代小説を読んでみたい
天野 純希のファン
ただ単に「天下取りたい!」
って言ってる奴ばっかりなのかと
思っていたけどそうじゃないんだな。
人の数だけ戦う理由がある。
そんな風に感じる連作短編集ね。
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