こちらは幼い頃の事件が原因で喋れなく
なってしまった少年が特殊な能力から
犯罪の道へと入り込んでしまう物語よ。
喋れないのか。何かと不自由
しそうだな。特殊な能力ってなんだ?
錠前を解くことができるの。
あるきっかけでプロの解錠師から
技術を学び、その後を継ぐの。
なるほどね…。それで犯罪グループの
一員となって鍵を開ける仕事を担当
するのか。そんなことがいつまで
続けられるのだろうか?
『解錠師』
スティーヴ・ハミルトン (著), 越前敏弥 (翻訳) ハヤカワ・ミステリ文庫
あらすじ
八歳の時に起こったことが原因で話すことができなくなってしまったマイク。
しかし彼には見たものを正確に描き出すこと、そしてどんな錠でも開けることができるという才能を持っていた。
やがて高校生になったマイクはあるトラブルから、プロの金庫破りの弟子となり、まさに芸術家と呼ばれる凄腕の解錠師となる。
最高と感じていたチームとともに成功を重ねてきたが、チーム内に不穏な空気が漂いはじめる。
才能に恵まれた少年が歩んだ道
八歳の時の出来事から口をきけなくなってしまったマイクは、街のちょっとした有名人でもありました。
しかし何を話しかけられても言葉を発しないため、友だちはいません。
高校に入り、美術教師に絵の才能を認められ、また美術クラスの友人もできました。
同級生がロッカーの錠の番号を忘れ困っていたところ、マイクは見事にこの錠を開いてみせます。
驚き、感謝した彼らはフットボールチームのライバル校メンバーの家に侵入していたずらをするので、そいつの家の錠を開けてくれないかと頼まれます。
断らなくては、と頭の中で思いつつも違う鍵に挑みたいという好奇心に抗えず実行。
鍵は見事に開きますが、警察に見つかりマイク一人で実行したことに。
被害者宅で奉仕活動をすることになったマイクは黙々と作業をこなしますが、家主の事情により、プロの金庫破りの弟子入りをすることに。
技術を我がものにしてプロの跡を継ぎ、金庫破りとして活動し始めたマイクは、プロの犯罪集団に呼ばれ、メンバーの一人として活躍します。
しかしリーダーの準備をかける時間が長すぎる、とそのやり方を非難するメンバーが現れます。
マージンを払っている相手の船から、そこに積んである大金をごっそり奪い取ろうではないか。
そんな話が出てきて…。
まとめ
口のきけないマイクですが頭の中では十代の少年らしく相手をののしってみたり落ち込んでみたりと感情豊かです。
また話せないからこそ絵を描き伝えることで心を通わせることになった恋人とのやりとりも甘く、せつないのですが、先が読めずにハラハラします。
また後半で明らかになるマイクの過去に起こった出来事も衝撃的で、言葉を失うのも無理はない、と感じる一方でその体験を経て解錠師になったのかと思うと何とも言えない思いが胸を渦巻きます。
絵で恋人と話し、ダイヤルを回して錠と会話する。
そんな一人の少年の恋と犯罪の日々を描いた物語です。
<こんな人におすすめ>
喋れない少年が金庫破りとして犯罪に手を染めていく物語に興味がある
稀有な才能ゆえ不幸な道を歩まざるを得なかった少年を描いた話を読んでみたい
スティーヴ・ハミルトンのファン
マイクの過去が…(TдT)
そんな彼を支えてくれる彼女との
やりとりがまた胸を打つんだ…(´^`*)
過去の事件やちょっとしたボタンの
かけ違いから犯罪の世界へ余儀なく
入ることになってしまった少年の
姿を描く感動の物語ね。
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