こちらは猫との関わりで
救われた女性たちの姿を
描く七つの物語よ。
猫の力は偉大だからな。
我々が救ったのはどんな
境遇の女性たちなんだ?
離婚後、汚部屋に暮らすように
なってしまった女性や、息子を
亡くして意気消沈していた母親などね。
それは苦しい状況だよなあ。
猫たちはどんな風に
彼女たちを助けたんだろう?
『みちづれの猫』唯川 恵 (著) 集英社文庫
あらすじ
離婚後、抜け殻のようになりゴミ溜めのような部屋で暮らしていた江美。
そんな江美の部屋のベランダに茶トラの牡猫がやってきた。
茶太郎と名付けた猫との生活で江美は次第に自分の心と身体を取り戻していく。
しかし茶太郎はある日家を出ていったきり帰らなくなった(「運河沿いの使わしめ」)。
傷ついた時、そこに寄り添ってくれる猫に救われた女性たちの心あたたまる七つの物語。
突然やってきた茶トラの牡猫
掃除も洗濯も料理も、仕事をしながらもマメにこなしていた江美ですが「会社にいるより疲れる」と元夫に言われ離婚。
これまで良かれと思ってやってきたことが相手の負担になっていたとは。
自分自身を全否定されたようで、料理も掃除もする気が起きなくなってしまった江美。
コンビニでご飯を買い、捨てるのもおっくうだとゴミを積んでいくうちに汚部屋になってしまいます。
そんな中ベランダに茶トラの牡猫がやってきます。
江美の顔を見るそのまっすぐな瞳に思わず部屋へ入れると猫はわがもの顔でくつろぎはじめます。
そっとなでたその毛並みのあたたかさ、やわらかさに驚き、江美の心もあたたかくなります。
茶太郎と猫に名付け、快適に過ごせるよう部屋を掃除し、エサやトイレを準備。
茶太郎のおかげで充実した日々を送り、気力と体力を取り戻すことができた江美。
しかし、ある日を境に茶太郎は戻らなくなります。
必死に茶太郎を探す江美は迷い猫を探すチラシを目にして…(「運河沿いの使わしめ」)。
まとめ
離婚して傷ついた時、肉親を亡くして悲しみの底に沈んでいる時、切れてしまった大切な人との絆を思う時、残された時間を過ごす時。
一人では乗り越えられそうにもない苦しみに出会った彼女たちのそばには猫がいました。
時に人と人をつないでくれたり、折れそうな心をやわらかな毛で包み込んでくれたり、大切なことを思い出させてくれたりします。
言葉では伝えられない大切な想いも、猫を通すことで素直に伝えたり、相手の思いを受け止めることもできる。
そんな、人の心を、まっさらにさせてくれる猫に救われてきた女性たちを描く感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
猫が好き
人生の様々な場面で猫に救われてきた女性たちを描く話を読んでみたい
唯川 恵のファン
存在するだけで多くの人間が
救われるというのに茶太郎は
積極的に人助けかよ!!
スキル高すぎだろ。かっこいいな…。
落ち込んだ時や傷ついた時に
そっと寄り添ってくれる猫は
人間の心の動きを理解して
いるのかも。そんな風に思うだけで
心が温かなもので満たされるわね。
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