こちらは大奥で働く
様々な役職の女性たちを
描く物語よ。
大奥!そういやどんな仕事が
あるとか考えたことも
なかったけど。というか
お殿様に気に入られたらラッキー
みたいなこと?
世間の認識としてはそういった
部分もあるわね。でもここに
登場する女性たちは必ずしも
その考えを良しとはしていないの。
ほほう。玉の輿よりもキャリア
づくりを大切にするってことか?
江戸の女性キャリアはどんな感じ
なのか気になるぜ!
『大奥づとめ: よろずおつとめ申し候』
永井 紗耶子 (著) 新潮文庫
あらすじ
大奥での出世といえば、上様の目に留まり、お手付きになり、いずれは子を産んで育てること。
江戸の多くの人々がそう考える中、大奥の中には別の生き方を望む女たちがいた。
お手付きにならない「お清」と呼ばれる女中たちは、それぞれの持って生まれたものを生かしたり、努力しながら日々のおつとめをこなすが、彼女たちにも悩みがあった。
出世したいと思う気持ちが空回りするお利久
十六歳で大奥へ上がり、奥女中の要である御年寄様に仕えることになったお利久。
何人ものお手付きの女性たちが子を成さぬことで身の置き所のない様子を見ると、お手付きもどうなのかと感じています。
ある事情から家に戻ることができないお利久は、この大奥の中で出世していきたい、と考えます。
御台様に乞われるまま、琴を弾きますが上手く弾くことができず、気持ちはあせるばかり。
そんな折、帰ることができないと思っていた里から、妹の香奈が婿を取る、という知らせが届きます。
意を決して里帰りをしたお利久は、母や妹と話し、大奥での出世への決意を新たにします。
戻ってからひたすらに大奥のおつとめをこなすお利久に声をかけてきたのは、大奥の文書係である御祐筆のお藤様でした。
まとめ
大奥に入り、上様のお手付きとなり、子供が生まれれば成功者。
こんな価値観に否を出す、大奥の女性たちを描いた物語。
夜這いをかけてきたろくでもない婚約者をはりたおしたお利久もその一人。
婿を取って家の跡を継ぐのだから何をされても仕方がない、とは考えられません。
家から逃れるように大奥に入り出世を目指すも、自分の「適職」が何かわからずにもがいています。
女しかいない大奥ではすべてが女の仕事です。
文書係、スタイリスト、男たちとの交渉に台所の力仕事。
それぞれの場で、自分の能力や女としての生き方に悩みながらも、己の仕事に誇りを持って取り組む女たちの姿が生き生きと描かれています。
仕事への思いや実績が彼女たちを支える大きな柱となる、読後感の良い江戸のお仕事小説です。
<こんな人におすすめ>
大奥で自分の仕事を生きがいとしていた女性を描く物語に興味がある
女としての人生と仕事との間で思い悩む江戸の女性の話を読んでみたい
永井 紗耶子のファン
女の幸せはひとつじゃないよな。
女の数だけ幸せの形もあって
いいはずだ。先輩方の言葉が
染みるなあ。
彼女たちの生き方には
現代の女性たちも勇気を
もらえるのではないかしら。
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