こちらは田舎の町にやってきた
美人教師をめぐる悲劇を描く
ミステリーよ。
ほほう。田舎に美人教師。
とくれば何か恋愛的トラブルが
起こったり…?
そうね。妻子ある教師と
恋仲になるのだけれど
一人の生徒がその成り行きを
見守ることで新たな悲劇が…。
なになに!?
不倫の末の恋愛がどんな悲劇を
産むというのか。その生徒は
彼らの恋愛にどう関わっていたんだろう?
『緋色の記憶』トマス・H・クック (著)
鴻巣 友季子 (翻訳)ハヤカワ・ミステリ文庫
あらすじ
小さくて美しい田園の村チャタム。
ボストンからのバスに乗ってやってきたのは、女教師ミス・チャニング。
彼女がやってきたことで静かな村にはさざ波のように波紋が起こる。
チャニングが同僚を愛したことで起こった悲劇は『チャタム校事件』として名を残す。
老弁護士の回想する思い出は当時の記憶を鮮やかに蘇らせる。
田舎町に現れた美しい女教師
1926年8月。
小さな田舎の村、チャタムへやってくる女教師を迎えるため、学校の校長を務める父とともにバス停へと向かったヘンリー。
現れたミス・チャニングは白い肌を際立たせる深緋色のブラウスに身を包んだ美しい女性でした。
幼い頃から父に連れられ、世界各国をまわってきたという彼女の担当教科は美術で、その授業内容もユニークなものでした。
チャニングを学校から家へと車で送る担当になったのは、英文学教師のリード。
戦地から戻り、教師になった彼は胸に何か抱えているかの様子でした。
二人の間に特別な空気を感じ、またこの閉塞感のある村の空気にウンザリしていたヘンリーは、二人の仲を応援しよう、と思いつきます。
しかし、リードには妻と幼い娘の存在が。
一度は終わったかのように見えたチャニングとリードの関係。
やがてチャタム村を去ることになったチャニングは村を騒がせる悲劇に巻き込まれるのです。
まとめ
第一次世界大戦後、人々の暮らしが変化しはじめたアメリカの中でも、まだこれまでの価値観の中で暮らしているチャタムの村。
そこに現れたのは世界を見てきた若く美しい、そして意志を持った女性。
どこか世の中に対して諦めを持ちながら胸の奥深くにくすぶる熱を持つリード。
二人を見守る少年、ヘンリーが見たもの、行った行為、そして証言した内容とは。
情熱と自制、抑圧された苦しみが繊細に描き出された、読後に深い余韻を残すミステリーです。
<こんな人におすすめ>
1920年代のアメリカの価値観を反映した男女を描いた物語に興味がある
許されぬ教師間の恋愛とそれに関わる少年の思いから生まれた悲劇を描いたミステリを読んでみたい
トマス・H・クックのファン
えええ… 抑圧された
価値観の中でこんな展開に
なっちゃうの…?
抑えた筆致で抑圧や秘した
愛情、少年の憧れや葛藤を
描く文学のような深い余韻の
残る物語ね。
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