こちらはある俳優と関わった
ことにより、その後の人生が
変わっていった人々を描いた
物語よ。
俳優かあ。人生が変わるだなんて
どんな出来事があるんだ?
才能を目の前にして夢を諦めたり
この俳優がロケでやってきたことが
きっかけで人間不信になったり…。
あららら。影響力が大きいのも
良し悪しだな。彼らは俳優との
関わりや自分の人生について
どう思っているんだろう?
『雨の中の涙のように』遠田潤子 (著) 光文社文庫
あらすじ
雨の音を聞くと彼のことを思い出す。
長身ですらりと手足が長く、儚さを帯びた美しい顔で人々を魅了する芸能人・堀尾葉介。
彼と関わりを持った人々は、それと気づかぬうちに己の人生が思わぬ形に動きはじめる。
そして葉介自身の苦しみにもまた変化が訪れ…。
今の道を生きるきっかけを作ったある芸能人
姪が見せたティーン向けのファッション雑誌。
そこに掲載されたモデルの少女を見て、ハンコ屋を営む伍郎はハッと息を飲みます。
十年前、役者を目指していた伍郎は、やはり売れない役者で幼い娘を持つしのぶと交際していました。
時代劇が廃れていく中、伍郎の得意技は殺陣。
ある日、アイドルの一員である堀尾葉介に殺陣を教えることになった伍郎。
アイドルあがりが、と最初はなめてかかっていた伍郎ですが、葉介の熱心さ、謙虚さ、そしてその才能を見せつけられます。
役者をあきらめ、実家のハンコ屋を継ぐことを決めた伍郎は、しのぶと娘に一緒に暮らさないかと告げるのですが…。
小西鶏卵店を営む章は四十一歳の独身。
主力商品は「だし巻き」で親の代から人気があります。
十七年前、堀尾葉介がテレビ取材で訪れ、店の前は人で溢れかえりました。
父が倒れ亡くなり、母に頼まれ跡を継いだ章に、同じ商店街の夫婦が見合い話を持ち込みます。
見合い相手は感じの良い女性でしたが、上手く会話がつながりません。
他人に対して頑なになってしまうきっかけになったある出来事を、章は思い出していました。
まとめ
魅力的な芸能人、堀尾葉介に関わったことで人生が変わっていった人々の姿を描く連作短編集。
その思い出にはいつも雨が降っており、彼らが感じた苦しみや悲しさ、葛藤と共鳴しているかのようです。
多くの人々に影響を与えた葉介が抱えるものの大きさ、重さに愕然としながらも、それらを包み込み、流してくれる雨のあたたかさに胸が熱くなる、感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
一人の芸能人によって人生が変わっていった人々を描いた話に興味がある
人生の転機と雨がリンクした物語を読んでみたい
遠田潤子のファン
みんなそれぞれ抱えるものがあって
それが堀尾葉介の中のある部分と
共鳴したのかもしれないな…
彼の背景にある雨のシーンが
彼らの苦しみや葛藤をやさしく
洗い流してくれる物語ね。
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