こちらはミステリ界の魔術師、
泡坂妻夫生誕90周年記念に伴い
復刊された作品よ。昭和を背景に
鮮やかな手法で読者を騙す短編集なの。
魔術師!なんかかっこいいな。
泡坂妻夫ファンだという
現役ミステリ作家もたくさん
いるよな。
そうね。意表を突いたトリックも
さることながら、しっとりとした
感情を描くことにも定評があるわ。
なるほどねえ。そんな作家の
描き出す人物像が、謎をいっそう
深めるってことかな。
どんなミステリなのか気になるぜ。
『ダイヤル7をまわす時』泡坂 妻夫 (著)創元推理文庫
あらすじ
戸根市では市の西側勢力である大門組と、市の東半に根を張り始めた北浦組の二つの暴力団がいがみ合っていた。
そんなある日、北浦組の組長が殺害される事件が発生。
現場では電話機のテープが抜き取られ、さらに電話を使った形跡が。
犯人は殺害後どこへ、何のために電話をかけたのか。
『ダイヤル7』ほか鮮やかな手法で読者を騙す7つの作品を収めたミステリ短編集。
犯行後に電話をかけた犯人の意図
北浦組の組長、北浦進也が自宅で何者かに心臓をナイフで一突きされ、死亡。
現場に駆けつけた刑事たちは、大時計が止まっていることに気づきます。
妻の話によると、北浦の帰宅後、大門組の者と名乗る人間から、折り入って組長と話がしたい、という電話がかかってきたとのこと。
電話の内容は重要な手がかりとなりそうですが、通話を録音されたテープは犯人が持ち去っていました。
検死の報告では電話機や電話番号簿、ドアノブなど犯人が触れたと思われる箇所は犯人が拭き取った様子であることが判明。
テープを取るだけでは電話機に触れる必要がないことからあえて犯人は犯行後電話を使ったことになります。
電話番号を確認してかけた犯人のこの行動。
いったいどこへ、何のためにかけたのか。
捜査上に浮かんできたのは今日出所したという北浦組の狭間清。
大門組の幹部を殺害した罪で刑務所に入っていたのです。
狭間の愛人だった志水満子は今では北浦に囲われる身。
愛人を奪われた腹いせに北浦を殺害したのかと推測する警察。
その時、満子が出頭してきて、犯行当日の夜は狭間とずっと一緒にいたこと、彼と事件は関係ないことを訴えます。
北浦に電話をし、そして殺害した犯人はいったい誰なのか。
まとめ
殺害後に電話番号簿を見ながら犯人が電話をかけた理由。
その謎が興味深いことはもちろん、犯人の正体の意外さと動機に驚き、またその深さに思わず唸ります。
『ダイヤル7』のほか、様々な趣向と設定で描かれたミステリたちは短編ながらどれも印象深く、マジックショーを見ているかのような鮮やかさです。
騙される快感を堪能できる珠玉のミステリ短編集です。
<こんな人におすすめ>
読めば必ず騙される、鮮やかなミステリを読んでみたい
昭和の香りを色濃く残すミステリが好き
泡坂 妻夫のファン
泡坂 妻夫生誕90年記念出版作品のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
えっ 電話をかけた理由は
それか!!そして犯人の意外さよ…
幕引きまでもが鮮やかだなあ!
読めば必ず騙される、伏線や
トリック、犯人当てなど
満足度の高いロングセラーの
ミステリ短編集ね。
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