こちらは三ツ矢&田所刑事シリーズ第3弾。
中野のマンションで起こった事件と
過去に起こった北海道鐘尻島での事件が
次第に結びつきを見せていくミステリーよ。
お、この噛み合わないコンビ
俺好きなんだよな〜。
中野と北海道鐘尻島なんて
えらく離れているけど
いったいどんな事件が?
中野ではシングルマザーが
頭を殴られ意識不明に。
現場には「私は人殺しです」と
書かれた紙が落ちていたの。
鐘尻島では1990年代はじめ頃
リゾート建築計画が頓挫した
ことで自殺者や失踪事件などが起こるわ。
ほうほう。どう結びつくか
見当もつかないけど
三ツ矢がまた鋭い推理力を
見せてくれるんだろうな。
楽しみだぜ!
『あなたが殺したのは誰』
まさき としか (著)小学館文庫
あらすじ
中野区のマンションで女性が殴られ意識不明の状態となる事件が発生。
被害者の長澤美衣紗はシングルマザーで、娘のしずくは連れ去られ行方不明に。
現場には「私は人殺しです」と書かれた便箋が。
時は遡り、1990年代はじめ頃、北海道鐘尻島では巨大リゾート「リンリン村」の建設が頓挫。
島の未来に期待し裏切られた島民の一人が自殺したことをきっかけに、島では立て続けに不幸な出来事が起こる。
バブル期の熱に踊らされた島民たちと、シングルマザーを襲った事件のつながりとは。三ツ矢、田所コンビが事件の真相を探る。
過去に起こった島での出来事と現代の事件の関わりとは
リンリン村の建設は中止し、企業は撤退する。
この知らせを聞き、島の老舗料亭の息子、小寺陽介は、観光客を見込んで多額の借金をした父親、そして店を継ごうと考えていた自分の将来に不安を覚えます。
建設工事の下請けをしていた人物が、リンリン村の鉄塔で首を吊って死亡。
街中は不穏な空気に包まれます。
また、夫について鐘尻島へやってきた常盤由香里は、野暮ったく退屈な島暮らしを嫌悪しており、苛立つ気持ちを娘の結唯にぶつけていました。
習いごとを終えた結唯と家に戻ると店の前に料亭の若大将、小寺忠信が倒れていて常連たちが心配そうに見ています。
料亭を拡張するため借金をした小寺はリンリン村の開発中止の知らせに耐えきれず、飲み潰れてしまったようで…。
時は現代に戻り、東中野のマンション一室で血を流した女性が倒れているという通報を受け、戸塚警察署の田所刑事は現場へ向かいます。
現場には「私は人殺しです 五十嵐善男」と書かれた便箋が。
さらに被害者の十ヶ月になる娘、しずくが連れ去られ行方不明に。
捜査会議に現れた、ひょろりとした体型で曖昧な表情を浮かべた、警視庁捜査一課の切れ者であり変わり者でもある三ツ矢秀平と田所は再びタッグを組み事件に挑みます。
まとめ
北の果ての地にもたらされたリゾート計画は島民たちに希望の光を与えました。
しかしその光が消えた時、島民たちを襲ったのは絶望や諦めでした。
それでも何とか未来につなげていきたいと考えた彼らの選択が、さらに別の者の悲しみや苦しみを生み、不幸を作り出していくのです。
何を考えているのかよくわからない、自由すぎるキレ者の三ツ矢に振り回されつつ、良い相棒ぶりを見せている田所が、重い展開の中に明るさを入れてくれてバランスの取れた読み心地です。
島に生きる者とその未来、逃れられない生と死を描く読後の深い余韻がいつまでも胸に残るミステリーです。
<こんな人におすすめ>
1960年代、北海道の小さな島で起こった出来事をきっかけに現代の事件につながっていくミステリーを読んでみたい
三ツ矢&田所シリーズのファン
まさき としかのファン
なんと…!不幸の連鎖が
こんな形で現れるとは。
胸が痛い…。
リゾート建設という光が絶えた時
人々に落とした影を落としたわ。
夢は終わっても人生は続いて
いくものなのよね。
三ツ矢&田所シリーズのいイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。