こちらは昭和の終わる頃
南河内のある一家の次女の
縁談の話をめぐり、家族の
思惑がせめぎ合うお話よ。
縁談の話?おめでたいじゃないか。
ひょっとしてそう単純な話ではない?
そうね。近所に住む姉や
母、父、祖母などの価値観、
関係性などが複雑に入り組んで
嫉妬や怒りなど様々な感情が
入り乱れるの。
なるほどね。結びつきも強いけど
その分感情的に面倒な部分もありそうだ。
『いかれころ』 三国 美千子 (著)新潮文庫
あらすじ
昭和が終わるころ、南河内の本家の次女・志保子に縁談が持ちあがる。
女性は25歳までに結婚を、釣り合った見合いの相手と結納を交わす。
長く地域に住む人々の間ではこれが一般的であり、恋愛結婚をした者はどこか蔑んだ目で見られることも。
本人の意思はそっちのけで世間体を気にした親戚中の思惑がぶつかり合う。
志保子の姉・久美子の娘である4歳の奈々子は、そんな彼らの様子を子どもらしい目で見つめていた。
本家の次女に持ち込まれた縁談話
本家の次女・志保子は25歳の独身。
頭が良く、口数が少ないが、姪の奈々子の面倒をよく見てくれます。
いつも片手に大切なものが入ったカゴをかけ、手元から離すことのない志保子。
奈々子はそのカゴの中は何が入っているのか、気になっています。
本家の長女・久美子は婿を取り、分家として本家の近くに家を建てました。
婿である夫は家のことに目を向けず、一方久美子はそんな夫を馬鹿にしたり、やりとりにかんしゃくをおこしては奈々子にやつあたりをしたりします。
そんな中で浮上した志保子の縁談に、結納金が少ないと文句を言ってみたり、片付いてありがたい、という意見、そして厄介ごとが一つ減った、というささやきあり、親戚達が自分の立場であれこれと話します。
そして志保子の決断は。
まとめ
一人一人が個性も我も強く、それが何人も集まってそのエネルギーたるやすさまじいものがあります。
いがみあい、ぶつかり合う彼らの困った部分もまた血のつながりを感じさせ、美しい景色と相まって、いとしさを感じずにはいられない物語です。
<こんな人におすすめ>
家や家族がおりなすせめぎあいを描いた話に興味がある
本家や分家、家族の地位などに苦しみ、葛藤する様を描いた話を読んでみたい
家の中や大人の様子を子どもらしい目線で描いた話を読んでみたい
うわー これまた強い人がたくさん…( ̄O ̄;)
こんな価値観の中で生きてきたんだなあ。
狭い価値観かもしれないけれど
自分の大切なものを貫いて生きる
姿が眩しいわね。
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