こちらは自分であることに
馴染めない男女たちの姿を
描く物語よ。
ほほう。彼らはどんな風に
感じているんだ?
顔だけで周囲から判断されてしまう
男子高校生、元カノの存在に悩む
女子大生、誰もが自分を不快にさせる、
と考える中高年サラリーマンなどね。
自分の感覚や思うことと
外部から見られたり感じられたりする
部分が違うってことだな。全部流せれば
いいんだろうけどそうもいかないことも
あるよなあ。
『眠れない夜は体を脱いで』彩瀬まる (著) 中公文庫
あらすじ
イケメンと言われる自分になじめない男子高校生、合気道教室で若い男性と組むことになった五十代の女性会社員、美しく手の届かない場所にいる元カノの存在に悩む女子大生、誰もが自分のことを不快にさせると感じている銀行の支店長。
彼らは「手の画像を見せて」というコメントと、それに応えて多くの手の画像が掲載されたネット掲示板に辿り着く。
「イケメン」な自分の顔になじめない
女の子は遠まきに見つめるか、積極的に寄ってくるかで、男は「イケメンはいいよな」などと言ってくる。
付き合う女の子とは長く続かず「あなたのことがよくわからない」と言われてフラれる。
「イケメン」と呼ばれる顔の持ち主である和海は近づいてくる人間はみな表面を見ていて自分の中身を見ずに勝手に失望していくのだと感じています。
彼氏が撮った短編映画『まぼろし』は高い評価を受けた作品。
モデルのマリアは交通事故で亡くなります。
女子大生の香葉子は、この映画を見るたび、彼はマリアのことが忘れられないのでは、と思い悩みます。
完璧なマリアの姿に打ちのめされた香葉子のそばには若い女の姿が…。
まとめ
自分の顔や体になじめない、ジェンダーの価値観を押し付けられることに苦痛を感じる、また自分が違う性別だったとしたら…。
「自分である」ことに疲れを感じた夜、彼らは多くの手の写真が掲載される掲示板に辿り着きます。
人々の手をほめちぎるスレ主と、そこに嫌悪や違和感を覚える登場人物たち。
「見た目」で判断したり価値を決めつけられることに疲れた彼らは、やがてリアルの中に喜びが潜んでいることに気づくのです。
自分がしっくりとなじむ場所はきっとある、と思える物語。
<こんな人におすすめ>
自分に違和感を感じる男女を描いた物語を読んでみたい
「手」という共通のモチーフで繋がる人々の物語に興味がある
彩瀬まるのファン
「手」って見えるところだけど
顔よりも気にされなくて、案外
もっともその人らしい部分と
言えるのかも。
自分のままでいいと感じることは
周囲の人のことも認めることに
つながっていくのかもしれないわね。
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