こちらは古書店を営む祖父を
亡くして一人ぼっちになってしまった
男子高校生が喋る猫とともに
本を守る冒険に挑む物語よ。
猫が喋る?ファンタジーな
物語なのか?
そうね。古書店の奥に別世界が
現れるのだけど、そこには
とにかく多くの本を読めばいい、
本はエッセンスだけを抽出して読めばいい、
売れる本だけ作り売れない本は捨てればいいい、
などと主張する者たちがいるの。
ん?それって現実世界の話なのでは?
主人公はどんな風にしてそいつらと
対峙していくんだろうな。
楽しみだぜ。
『本を守ろうとする猫の話』夏川 草介 (著)小学館文庫
あらすじ
夏木林太郎は、色白で無口、少し厚めの眼鏡をかけた、ごく一般的な高校生。
古書店を営む祖父との二人暮らしだったが、その祖父が亡くなり叔母に引き取られることに。
ある日、店の棚の奥から声が聞こえ、見てみるとそこには一匹のトラネコが。
「わしはトラネコのトラだ」と名乗るそのネコは林太郎に向かって「お前の力を借りたい」と言った。
閉じこめられた本を救うために、林太郎の力が必要だと言うのだが…。
人間の言葉を喋る猫からの「お願い」とは
自分はよほど疲れているからおかしなものが見えるのだろう、と思いつつ、どことなく祖父の面影を感じさせるネコに導かれ書棚の奥へと向かった林太郎。
あるはずの壁にはつきあたらず、まばゆい光に満たされた後、立派な邸宅の前に、トラとともに辿り着きます。
この邸の主人が本を閉じこめているのだとか。
案内された部屋には広い空間にショーケースがずらりと並び、中は本で埋めつくされています。
本はたくさん読むことに価値がある、一度読んだ本を読み返す暇はない、と主張する主人。
そうではない、と思いながら納得してしまう部分もあり言葉を返せない林太郎。
しかしトラは「奴は巧妙に言葉を積み上げているが、すべてが真ではない。必ずどこかに嘘がある」と言います。
考え込んだ林太郎が発した言葉とは。
まとめ
単なるコレクションと化してしまっている蔵書、難解な本を要約するために切り刻んでエッセンスだけを伝える、本を売るために「売れる本」を作り続け、売れない本をどんどん捨てる。
現代における本との向き合い方の問題点がファンタジー要素を交えて描かれ、その答えが真摯な言葉で綴られます。
「本」が持つ力を改めて気付かせてくれる、多くの人に手に取ってもらいたい物語です。
<こんな人におすすめ>
「なぜ本を読むのか」をテーマにした物語に興味がある
人間の言葉を話す猫と本を守る冒険に出るファンタジーを読んでみたい
夏川 草介のファン
『本が好き』という気持ちを
思い出させてくれるような
物語だな。
本を愛する人はもちろんのこと
そうではない人にも手にとってもらいたい
「本」という存在について真摯な言葉で
描かれた素敵な物語ね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。