こちらは池に落ちて記憶を失った少女が
自分に違和感を感じはじめるの。
その原因を探ろうとするのよ。
違和感?どんな風に?
異常な食欲を感じて様々なものを
口にしていくの。妹からは
「そいつは偽物だ」と
言われてしまうのよ。
なるほど。異常な食欲に偽物疑惑か。
記憶を失っているとなると
証明もできないだろうし。無事に自分で
ある何かが見つかるといいな。
『カッコーの歌 』
フランシス・ハーディング (著) 児玉 敦子 (翻訳) 創元推理文庫
あらすじ
池に落ちて気を失った十一歳の少女トリス。
ベッドの中で意識を取り戻したとき「あと七日」という言葉が笑い声とともに頭の中に響く。
少しずつ記憶を取り戻すトリスのそばにいるのは父と母、それに私を憎んでいる九歳の妹・ペン。
ペンはトリスを偽物だと主張する。
トリスは自分自身に異変を感じる。
異常な食欲に恐ろしい記憶。
そして耳もとでささやかれる声は夜が明けると「あと六日」に。
トリスに何が起こっているのか。
記憶を失ったトリスが感じる自分への違和感
池に落ち、びしょぬれで帰ってきたと教えられたトリスですが、その時の記憶が全くありません。
不安を感じるトリスに母親のセレステが「日記を読んでみたら?」とすすめます。
しかし、トリスが日記帳を開くとページが破りとられていたのです。
おそらく妹のペンがやったものと思われますが…。
そしてトリスの体に異変が現れます。
強い空腹感を覚え、家で出される食事だけでは足りずリンゴの実を木からもぎとって食べ、さらには地面に落ちた腐った実までも口に入れます。
自分の部屋にある人形が動き、言葉を発します。
自分の頭がおかしくなってしまったのか、とセレスは恐ろしさに身を震わせます。
ある日、無断外出するペンの後をつけたトリスは、ペンが映画館の中の一室に入り「建築家」なる人物と会話をしているところを盗み聞きします。
そしてペンは自分の正体を知ることになるのです。
「あと七日」の先を手に入れるために、トリスは駆け出します。
まとめ
自分自身が化けものではないかと不安におののく病弱な少女、トリス。
妹のペンはきかん気の強い、かなり面倒な女の子ですが、物語が進むにつれ、彼女たちや両親の別の一面、見ようとしていなかった部分が明らかになっていきます。
揺らぐアイデンティティ、子供であるということでの行動の制限、親が認めない大人への協力。
次から次へと現れる限界以上の出来事を乗り越えていくトリスの姿にハラハラドキドキが止まりません。
物語の世界にどっぷりと入り込み、いつの間にかトリスと共に駆け出し、敵に立ち向かう。
そんな気持ちにさせてくれる物語です。
<こんな人におすすめ>
記憶を失くした自分の正体を探る少女の物語を読んでみたい
自分自身に目を向け、成長していく少女を描いた話に興味がある
フランシス・ハーディングのファン
トリスが様々な困難に立ち向かっていく
姿に応援したくなるぜ!!
困ったちゃんの妹、ペンがまたいい仕事してる!
トリスの正体が明らかになっていく様子に
ドキドキするわね。読後の充足感がハンパない
物語よ。
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