こちらは「貴族探偵」と名乗る
探偵が登場するミステリよ。
ほほう。貴族ときたか。
いろんなコネを持っていそうだから
それを駆使して推理をするとかかな?
そうね。現場の聞き込みや捜査、
推理まで使用人にやらせるのよ。
は?推理まで使用人がやるの?
そこまで何もしない探偵って
存在するのか!?
『貴族探偵』麻耶雄嵩 (著) 集英社文庫
あらすじ
信州の山荘で社長の死体が発見された。
現場は鍵のかかった密室。
果たして自殺か、他殺か。
警察の捜査陣の前に颯爽と現れた一人の男は「貴族探偵」と名乗り、警察上部への強力なコネを用いて捜査に介入。
しかし実際に現場を確認し、推理をするのは彼の使用人たち。
「人を使うのが仕事」と言う、未だかつてない「何もしない探偵」が登場する5編を収めたミステリ。
推理をするのは使用人たちの役目?
都倉計器の社長、都倉政一が山荘の一室で手首を切った状態で、死体となって発見されました。
部屋には鍵がかかっていましたが、何やら細工された形跡が。
これは自殺か、それとも他殺か。
関係者に話を聞いていた刑事のもとに現れたのは、オーダーメイドのスーツをぴしっと着こなし、優雅な口ひげを蓄えた男。
「貴族探偵」と名乗るこの男は事件を解決しに来たと言います。
警察の上層部にコネが効くらしく、渋々彼らに情報を提供する刑事。
現場を確認し、事件が解決したという探偵は刑事や関係者をリヴィングに集めます。
そして推理をするのは彼の執事である山本。
「あなたが推理するのではないのですか」という刑事からの問いに、探偵は「まさか。どうして私がそんな面倒なことを?労働は家人に任せると先ほど話したばかりでしょう」と答えるのです。
何故探偵を名乗るのか?という関係者の疑問をよそに、執事に推理の続きを話すように促すのです。
まとめ
高級スーツをぴしっと身につけ、優雅な物腰で女性好き。
いかにも「貴族」なこの探偵は、自分で推理しないという驚きの設定です。
推理するのは執事、メイド、運転手といった彼の使用人たち。
よく訓練され、完璧な仕事をする彼らの能力は推理の面でも発揮されます。
ほどほどに傲慢で浮世離れしたところのある探偵は、彼ら使用人たちを信頼しており、また使用人たちも主人に対し忠義を尽くします。
強烈なキャラが前面にたちますが、緻密なトリックも秀逸。
短編ながらどの作品も謎解きのおもしろさに満ちています。
何もしないのに妙に説得力のある「貴族探偵」にハマりそうです。
<こんな人におすすめ>
推理も調査もしない探偵を描いたミステリに興味がある
強い個性を持つキャラクターと緻密なトリックを楽しめる推理小説を読みたい
麻耶雄嵩のファン
本当に何もしないんだな…(;゚∀゚)
しかも手柄は当然のように自分の
ものに。これが貴族なのか…。
探偵と事件関係者の
ちょっとずれたやりとりが
笑いを誘うわね。よく練られた
トリックにも注目のミステリよ。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。