こちらは動物が自分たちだけで
農場を運営していくという物語よ。
はい?動物が農場を運営するの?
ブタとか牛とか馬とかが協力して?
なんか想像つかないんだが。
そうなの。字を読み書きでき
優れた頭脳を持つブタが
リーダーとなって計画し運営を
進めていくの。利益は皆で平等に
分配するのよ。
よくできた仕組みじゃないか。
…ってどこかの国を彷彿とさせるな?
『動物農場〔新訳版〕』
ジョージ・オーウェル (著), 水戸部功 (イラスト), 山形浩生 (翻訳)
あらすじ
メイナー農場の動物たちは飲んだくれ農場主ジョーンズを追い出し、農場を自分たちのものとした。
すべての動物は平等であるという理念のもと、優れた頭脳を持つブタのナポレオン、雄弁なブタのスノーボールらをリーダーに動物たちだけで運営する「動物農場」を設立。
穀物を育て、風車を作り、農場を奪い返そうとやってきた人間たちと闘ったり。
協力し、助け合いながらやってきた動物たちですが、そのルールは少しずつ変化し、農場内の動物間でも格差が生じるようになり…。
平等であるはずの動物農場の行方は
酒を飲んでばかりで動物たちの世話をしないジョーンズに腹を立てた動物たちは、彼に襲いかかり追い出すことに成功。
字を読み書きできるブタたちが「メイナー農場」の字を消して「動物農場」と書きました。
そして「二本足で立つ者はすべて敵」「四本足で立つか、翼がある者は友」「すべての動物は服を着てはいけない」「すべての動物はベッドで寝てはいけない」「すべての動物は酒を飲んではいけない」「すべての動物は他のどんな動物も殺してはいけない」「すべての動物は平等である」という七戒を定め、賢い動物は暗記しはじめます。
動物たちだけでの農場運営は困難を伴うものでしたが、自由であること、自分たちの場所であることが意識下にあった彼らは協力して難局を乗り越えてきました。
やがてスノーボールが裏切り者と噂され姿を消し、ナポレオンが「大統領」に就任すると、その特権は拡大していきます。
まとめ
自分たちだけの農場を手に入れた動物たちは、それぞれに割りあてられた労働をこなし、その結果得たものを分配していきます。
理想的で平等だったはずの世界は高い知能を持つブタが権力を手に入れたことで均衡が崩れていきます。
字が読めないから、食べることができているから、人間が支配していた頃よりマシだから…と思考停止に陥る動物たちの姿に考えさせられるものがあります。
また、権力者たちが戒律を巧妙に変化させ権利を拡大していく様子はあからさまであきれるほど。
他の動物たち、もっとツッコめよ!と言いたくもなります。
とはいえ、こんなゴリゴリの独裁者が身近に存在したら…と考えると恐ろしくなる、権力の在り方に批判を込めた物語。
<こんな人におすすめ>
権力構造に対する批判を寓話形式で描いた文学に興味がある
社会主義国家の理想が歪んでいく経過を描いた物語を読んでみたい
ジョージ・オーウェルのファン
うわ〜 これって…
最初はみんなが平等で幸せだった
はずなのに…。どうにかすることは
できなかったんだろうか。
支配者層が巧妙に自分の利益を
広げていく中、ただ言いなりに
なっている者たちの姿勢にも
問題があるのかもしれないわね。
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